ネルソン・マンデラ釈放に尽力した“謎のフランス人”、たった一度の会合振り返る
南アフリカの元大統領、故ネルソン・マンデラ氏釈放の立役者であるフランス人実業家ジャン=イヴ・オリヴィエが、有楽町の日本外国特派員協会にて10日に行われた映画『ネルソン・マンデラ釈放の真実』来日記者会見で、マンデラ釈放実現に対する思いを明かした。この日は監督のカルロス・アグーヨも出席した。
反アパルトヘイト(人種隔離)運動の闘士として知られたマンデラ氏は、1960年代に国家反逆の罪に問われ、およそ27年にわたって投獄されていた人物。ある日、反アパルトヘイトの精神に目覚めた「謎のフランス人ビジネスマンのジャック氏」ことオリヴィエは、投獄されているマンデラ氏を解放することこそが南アフリカに平和をもたらすと考え、服役中のマンデラ氏解放の極秘任務に携わった。
本作では、そんなアパルトヘイト収束のために尽力したオリヴィエの知られざる活動が描かれている。しかし彼は、これまで釈放の裏側について口を閉ざしてきたといい「この映画の話も最初は断っていたんだ」とコメント。「でも監督、友人たちに長い間にわたって説得されてね。この事件に関係した人たちからも『真実を語った方が良い』と。これはもう話す時期が来たんだなと思ったね。特に若い世代にこの真実を知ってもらいたかった」とオファーを受けた理由を明かした。
またその尽力にもかかわらず、マンデラ氏とは一度、朝食を共にしただけだというオリヴィエは「その日、わたしはカメラを忘れてしまってね。だからといって『カメラを忘れちゃった』と言うのはあまりにも恥ずかしい。マンデラさんから『写真を撮ろう』と言われても、『わたしはいいよ』と言うしかなかった。だから二人の写真はないんだよね」と笑ってみせる。
そして、この歴史的な偉業に対する外国人記者からの「どうやってこの困難に耐え続けた?」という感嘆の声に、「失敗してしまった。これ以上前に進めない。やめようとくじけそうになった時こそが大事。そういう時は、取りあえず寝たら忘れてしまうよ!」と晴れやかな顔を見せた。(取材・文:壬生智裕)
映画『ネルソン・マンデラ釈放の真実』はヒューマントラストシネマ渋谷にて公開中 全国順次公開予定