鈴木Pとスパイク・ジョーンズが対談!ジブリとジョーンズ監督作の共通項を語る
スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーとスパイク・ジョーンズ監督が29日、スペースFS汐留で行われた映画『her/世界でひとつの彼女』公開記念トークイベントに出席し、互いの作風の共通項について語り合った。
会場にやってきた鈴木は開口一番、「こういう言い方は失礼だけど、僕は本当はここに来てはいけないんです。夏に公開予定の『思い出のマーニー』を作っている最中なんですから」と軽口をたたきつつも、「じゃ、何でここに来たかというと、僕はスパイク・ジョーンズ監督の映画の大ファンなんです」と満面の笑み。一方のジョーンズ監督はジブリ作品の大ファンだということで、「今日は鈴木さんがゲストにいらっしゃると聞いて、興奮しています!」とワクワクが止まらない様子だった。
人生に絶望した男が、AI(人工知能)と恋に落ちるという、まさかのストーリー展開が高く評価され、第86回アカデミー賞脚本賞を受賞した本作。長編アニメーション部門に『風立ちぬ』がノミネートされたため、アカデミー賞授賞式会場にいた、と切り出した鈴木は「僕は座席に座っていたのに、彼は舞台にあがってスピーチをしていた。うらやましいと思いましたね」とコメントし、ジョーンズ監督を笑わせた。
さらに「彼の映画って一貫しているんですよ。社会から置き去りにされている人が主人公で、ある時、大きな出来事があって、その世界が一変する物語というのかな。そういうところに快感があるんですよ」と鈴木が分析すると、ジョーンズ監督は「ジブリ作品もそうじゃないですか? たとえば『千と千尋の神隠し』なんかでも、少女が異世界に紛れ込んで、とんでもない力を発揮するという物語じゃないですか。そこは似ていると思います」と返答。
さらに「21世紀に映画を作るにあたって、『孤独』というものはテーマになるんですかね?」という鈴木の言葉に、「考えたことはなかったけど、それは面白い考察です」と興味津々なジョーンズ監督。「実は『思い出のマーニー』のテーマもそうなんですよ。やはり世の中が変わってきたんだと思うんですよね」と語るなど、ジョーンズ監督の作品に同時代的なものを感じた様子の鈴木。
その後も、スカーレット・ヨハンソンの声の素晴らしさ、音楽と密接に絡んだ映画作りの話など、興味深い話の数々が披露され、鈴木も「面白い話でした!」と満足げな顔を見せていた。(取材・文:壬生智裕)
映画『her/世界でひとつの彼女』は6月28日より新宿ピカデリーほかにて全国公開