福島原発映画の脚本家、被災者をおとしめる国に怒りの主張!
原子力エネルギー問題の実像に迫る映画『あいときぼうのまち』の舞台あいさつが19日、都内・シネマート六本木で行われ、メガホンを取った菅乃廣監督、脚本家の井上淳一、さらには千葉美紅、黒田耕平、大島葉子、大池容子、瀬田直、里見瑤子、伊藤大翔、杉山裕右ら出演者が勢ぞろい。檀上で井上は、「われわれは映画の中で『東電』という名をあえて出した。この作品は、想像力の足りない政治家や国への水際の抵抗です!」と主張した。
本作は、日本の原子力政策に翻弄(ほんろう)され続けた福島のある一家の、4世代約70年(1945~2012年)にわたる葛藤の日々を描いた壮大な人間ドラマ。福島県出身の菅乃監督が初めてメガホンを取り、若松孝二監督の弟子で『戦争と一人の女』で長編初監督も務めた井上が脚本を担当した。
この映画を作るきっかけについて菅乃監督は「福島第一原発の爆発映像があまりに衝撃的で、その日以来、故郷の福島をより強く意識するようになった。放射能に関わるさまざまな差別を目の当たりにしているうちに、故郷を失った難民のような気持ちになり、福島を舞台にした映画を撮りたい! という思いが募った。やっとこの日を迎えられてうれしい」と感無量の様子。
一方、監督から脚本を託された井上は、最初は震災を受け止めきれず不安だったと明かしながらも、声を荒げ、「ドキュメンタリーでは『東電』と名指しで批判するのに、なぜかテレビや映画のフィクションの中では『東電』とは決して言わない。僕はこれが不思議でしょうがなかった」と主張。
さらに「僕たちはもう自ら自粛や忖度(そんたく)という名の表現の自由を放棄している。その思いを込めて『東電』という名を映画の中であえて使いました。この作品は、例えば『金目』などという下品な言葉で被災者の方をおとしめようとしている、想像力の足りない政治家やこの国に対する水際の抵抗なんです!」と持論を展開した。(取材:坂田正樹)
映画『あいときぼうのまち』は6月21日よりテアトル新宿ほか全国順次公開