未完の手塚アニメ、息子・手塚眞が完成へ「自分がやるしかない」
手塚治虫の息子でヴィジュアリストの手塚眞が5日、横浜市のブリリア ショートショート シアターで行われた手塚治虫の未完の短編アニメ「森の伝説 第二楽章」の完成記念トークイベントに出席した。
「森の伝説」は、手塚治虫がチャイコフスキー交響曲第四番の調べにのせて、自然と生命の素晴らしさを描く作品。本来は4つのエピソードが予定されていたが、手塚治虫の死によって、「第一楽章」と「第四楽章」が完成したところで未完となっていた。
しかし6年前、手塚眞が製作されていなかった「第二楽章」と「第三楽章」を補完すると宣言。27年前の父の作品に挑んだ理由について手塚眞は「父親が亡くなって、当初は残されたものってなかなか手がつけにくいし、他の人が触るのはどうだろうかという気持ちがあったので、何年もほったらかしになっていた。でも、今から8年前くらいに久しぶりに観返したら、残りも観たいなという気持ちがふつふつと湧いてきた。誰かが作ればいいのにと思っていても、誰も作らない。やむなく自分がやるしかないのかなと作ることを宣言した」と説明。
「第二楽章」の完成まで6年がたったことについては「締め切りのある仕事でもないので、試行錯誤を重ねているうちにたちまち何年もかかってしまった。あと、途中で東日本大震災もあって中断した」と明かし、「この作品は漫画の原作がある作品ではなくて、アニメーションのために作られた作品。手塚治虫の頭の中だけで組み上がっていたもので、ストーリーは手塚治虫が書いて残していたものですが、どんなアニメーションにしようとしていたかは正直わからなかった」と告白した。
その上で、「できる限り、こういうことじゃないかと思ってやっていたが、はたしてこれが本当に手塚治虫が目指していたものかはわかりません」と話し、「組み上がったときにどんな作品に観えるのか、僕自身も楽しみにしています。第三楽章はできるだけ早く作りたいと思っています」と笑顔を見せていた。(取材・文:名鹿祥史)
短編アニメ「森の伝説 第二楽章」は9月14日までブリリア ショートショート シアターで開催中の「手塚治虫アートアニメーション特集」内で上映