伊勢谷友介、日韓問題解決への思い「映画人として成すべきこと」
日韓合作映画『ザ・テノール 真実の物語』に主演している伊勢谷友介が映画への思い、そして日韓問題への自らの思いを語った。
本作への出演は映画人としての使命
本作は、韓国のテノール歌手べー・チェチョルの実話を基に、甲状腺ガンの影響で一度は歌声を失った韓国人テノール歌手が、日本人音楽プロデューサーの献身的な助けによって声を取り戻すまでの友情と軌跡をつづった作品。「最近涙もろくなったのかなって思うんです」と話した伊勢谷は「チェチョルが復活するコンサートのシーンですごく泣いているんですけど、実は監督から『泣くな』って言われて何回も撮り直したんです。でも何回撮っても泣いてしまって……。いよいよヤバいなって思いました(笑)。抑えているのに全開で泣いてしまうんですよ」と撮影を振り返る。だが、「この映画をやらなければいけない意味とかを考えると、自分のモチベーションが涙に変わってしまった」との言葉通り、涙の裏には伊勢谷の特別な思いがあった。
「韓国人と日本人がこんなふうに愛情でつながった実話があったことを僕は知らなかった」という伊勢谷は、「これを映画にして、多くの人たちに知ってもらえるのであれば、その一端を俳優として担うことが映画人として成すべきことだと。日韓問題が取り沙汰されている今だからこそ作るべき作品だと、僕は思ったんです」と決意を明かした。
日韓問題、解決への思い
これまで伊勢谷は自身のツイッターやFacebookで、日韓問題をはじめさまざまな人種間での争いに対する思いをつづってきた。自身の思いを口にして、その発言がネットで大炎上することもある。
「今、国家間の問題って、あまりにもあつれきが多すぎて解決の糸口が見つかっていないのが現状です。お互いをネガティブに思っている人たちだけが声を張り上げて、そう思っていない人たちが口をつぐんでいる。彼らの気持ちはわかるんです。声を上げて批判を受けるのは怖いことですから」と言う伊勢谷は、「それでも個人個人が愛情でつながって、それが広がれば国家間の解決になると思う。韓国人と日本人がハグをするようなフリーハグもそうですが、個人のアクションが世界を変えていくんじゃないかと思うんです」と語る。本作への出演は、伊勢谷にとってまさにそのワンアクションだった。
役柄から学んだ、信じることの大切さ
自分の発言がどんな炎上を呼んだとしても、「挫折禁止」をモットーに生きる伊勢谷がその信念を曲げることはない。その意志の強さは、自分の会社が経営の危機にさらされても「音楽家を守り通す」という信念を貫き通した本作の役柄とリンクする。「彼はどんなことがあっても、周りに何を言われても最後まで自分の思いを曲げなかった。これは本当にすごいことだと思うんです」。伊勢谷も、「リバースプロジェクト」という自身の活動の中で現代社会に変化をもたらそうと奮闘している。
自分の生き方について「この世界には、世の中にぶら下がって生きている人と世の中を引っ張り上げようとする人がいると思います。そのどちらかを選ぶのなら、自分は引っ張り上げる人間になりたい」と語った伊勢谷は以前、「人生は暇つぶしだ」という言葉に強い憤りを覚えたという。「それはまさしくぶら下がっていることを認める負けの言葉だから、絶対に言わないでほしい。社会を少しでも良くしようと思いながら生きてほしいと思う。その方法は、個人個人ができる範囲の中からでいいんです。みんなが自分にできることを一個ずつやっていく。その積み重ねが大きい悪をなくしていくための、善意の育て方だと思っているんです」、そう話した伊勢谷の言葉からは、絶対に曲げない意志を持った男の力強さを感じた。(編集部・森田真帆)
映画『ザ・テノール 真実の物語』は全国公開中