娼婦だった女性が男性から暴行を受ける女性のために立ち上げた団体とは?
サンダンス映画祭で監督賞を受賞したキム・ロンジノット監督の新作『ドリームキャッチャー(原題) / Dreamcatcher』について、“ザ・ドリームキャッチャー・ファウンデーション”の設立者ブレンダ・メイヤー=パウエルが語った。
本作は、少女期にドラッグ依存した娼婦ブレンダが、ある日白人の男に暴行され病院で目覚めた後、これからは自分と似た環境の女性たちを助けることを決意して、“ザ・ドリームキャッチャー・ファウンデーション”を設立し、男性から性的暴行を受けた女性たちに救いの手を差し伸べるというもの。映画『幻舟』のキム・ロンジノットがメガホンを取った。
被害者女性への接し方についてブレンダは「わたしも彼女たちと同様の環境で育った。彼女たちが性的暴行の話をするたびに、その話に共感し、もし当時のわたしならばどんな助けを求め、どんな言葉を投げかけてほしいかを考えているわ。ただ、話をする際に、自分が指示する前に、彼らが何をしたいのか事前に聞くの。なぜなら自分が先に指示したら、彼女たちが経験してきた男性の支配と同じことをするハメになるから」と答えた。
ブレンダ自身が受けた暴行について「ベンツを運転するスーツを着た白人の男性の車に乗ったときは安心していたの。人身売買や売春は、黒人による暴行の問題が多いから。でも、彼からお金を渡された途端、めちゃくちゃに殴られた。わたしも気が強いから、彼をはねのけ車から降りようとドアを閉めたけれど、わたしの衣服がドアに挟まったまま彼は車を運転し、およそ6ブロックもわたしを引きずったまま走らせた。そのときは体中の皮膚をむしり取られた感じだった」と語った。その際に顔半分が崩壊したそうだ。
病院で目覚めた彼女は「病院到着後すぐに緊急医務室に連れていかれたけど、その場に居合わせた警官が『彼女は娼婦だから、こうなっても仕方ない』と言って出ていき、その後看護婦が緊急医務室からわたしを待合室に押し出したの。そのとき、誰も娼婦のわたしのことを気にかけないことを理解し、しばらく祈っていなかった神に、助けてほしいと懇願したくらいだった。ところが、その後現れた女性の医師が親身になって話してくれて、わたしが完治するまで毎日対応してくれた。それが、今の団体のきっかけになった」と語った。
映画は、男性に支配される悪循環に陥った女性を希望に導くブレンダの熱意に圧倒される映画だ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)