韓国と日本の映画製作の違い…「恥じるべき」とヤン・ヨンヒ監督が苦言
『かぞくのくに』のヤン・ヨンヒ監督と、『フラッシュバックメモリーズ 3D』の松江哲明監督が2日、渋谷ユーロスペースで行われた映画『私の少女』公開記念トークショーに登場し、映画製作の熱意を語った。
元エリート女性警察官が、家庭内暴力を受けている一人の少女と出会ったことで生きる意味を見つけ出していく姿を描いた本作。『クラウド アトラス』などで国際的に活躍するペ・ドゥナと、『冬の小鳥』の天才子役、キム・セロンが共演、『オアシス』のイ・チャンドンが製作を務めており、世界的に高い評価を受けている。
そんな今作にノックアウトされたという二人。「監督の志の高さを感じました。いい意味でプロデューサーの制約が入っていない映画というか、監督の強い意志に貫かれている」と松江が語れば、チョン・ジュリ監督にインタビューを行ったというヤンも「イ・チャンドンが自由に作らせてくれたらしいんですよ。監督が昔聞いた寓話(ぐうわ)を10年かけて、膨らませて話を書いたらしいんですが、これがデビュー作なんて本当にすごい。よく、虐待とか育児放棄などをテーマにした映画だと、こんなひどい話があったんですよと見せるだけの話が多いんですが、この映画はそこから先に、闘うことを描き出している。何としてでも生き延びようとする、逃げない勇気を描き出している。そこが新しいし、刺激になる」と絶賛。
シナリオは、イ・チャンドンがほれ込み、ペ・ドゥナが出演を即決したというもの。「最初、キム・セロンさんが、これは難しい役だからと断り続けていたんですって」と切り出したヤンは、「でも、(オファーを受けたのは)何となくこれはやらなきゃいけない作品だと思ったからだというんです。いいシナリオは本当に磁石になるんだなと思いました。日本の映画界も、仕方がないと言い訳ばかりしていないで、もっとチャレンジすべき。塚本晋也監督の『野火』(7月公開)を観て心が痛かった。あの映画をあんな低予算で作らせるなんて。『野火』にお金を出さなかった製作会社は恥じるべきです」と苦言を呈した。(取材・文:壬生智裕)
映画『私の少女』はユーロスペースほかで全国順次公開中