宮沢りえ・藤木直人・蜷川幸雄の舞台「海辺のカフカ」アメリカでの反応は?
ニューヨークのリンカーンセンターで開催中の「Lincoln Center Festival」で上演された蜷川幸雄演出の舞台「海辺のカフカ」について、観客に聞いた。
本作の主人公、東京の中野に住む中学生の田村カフカ(古畑新之)は、父親にかけられた呪いから逃れるために家出を決意。深夜バスで高松の私立図書館を訪れ、その図書館の司書・大島(藤木直人)や幼い頃に家を出た母と思われる女性・佐伯(宮沢りえ)と出会う物語と、猫と会話ができる老人・ナカタさんがトラック運転手の星野と共に四国に向かう物語が交錯する。
まず、ニューヨーク在住のジェフ・ローベルさんは、「僕は村上春樹の作品を読み、何年にもわたって彼の活動を追ってきたが、これが初の舞台観劇だ。蜷川幸雄の名前は聞いたことがあるが、彼の作品は知らなかった。舞台は、特にセットが際立って素晴らしく、キャストの演技も良くて、マジカルな世界に誘ってくれた。その中でも、ウィンドウディスプレイを通したセットは、柔軟でユニークな思考で、設定によってセットをスムーズに動かしていた」と答えた。
続いて北欧出身で、現在ニューヨーク在住のズノベ・シャーピルさんは「6年前に、原作『海辺のカフカ』を読んでいて、この舞台鑑賞前に再度原作を読み返したが、舞台はとても原作を忠実に表現していると思う。カラスと呼ばれる少年が、舞台では主人公田村カフカの周りで黙っているシーンは、原作では想像できなかったので面白かった。ジョニー・ウォーカーの殺害シーンを、田村カフカのシーンと同時に舞台で交錯させながら描いていたのも興味深かった。暗喩的な表現をしないアメリカの舞台とは、かなり異なっていてよかった」と答えた。
テキサス出身で、現在ニューヨーク在住のマイク・ストループさんは「原作を読んだ僕は、原作を見事に捉えたセットでの表現に感銘を受けた。原作にあるシュールレアリスムや時代設定の変化を、このセットで明確にし、視覚的にとても理解しやすいものだった。ただ僕らは日本語の舞台を、英語に訳された舞台装置のキャプションを通して観劇していたため、英語に訳された際に失われた部分はあったと思う。でも日本語自体は素晴らしいため、あえて英語で演技をしなくて良かったと思う」と日本語での舞台を評価した。
アメリカでは全体的に評価が高いようだ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)