“一般”から“オタク化”する企業 コミケに自社コンテンツで勝負
先週末、日本最大の同人誌展示即売会・コミックマーケット88(コミケ88)が東京ビッグサイトで開催された。一般参加者のほか同イベントには、一般企業も参加。参加企業としては、自社コンテンツに固定ファンがいるアニメ制作会社やゲーム制作会社、アニメ作品とコラボした自社製品を製作する企業が多数だが、中にはコミケのために自社で新コンテンツを用意した企業・団体も存在している。
コミケ88開幕前から最も注目を浴びていた企業の一つに森永製菓がある。今回初出展の同社は、コミケ前にコミケの暗黙のルールを解説する非公式ハウツー動画「HOW TO SURVIVE COMIC MARKET」を公開。動画では、熱中症対策をすることや、声を掛けて列最後尾の札を受け取ることなどが説明されている。イベント当日は「ウイダーinゼリー」の販売と、鍛え上げられた筋肉を誇る男性で結成された「10秒チャージ隊」との写真撮影会などを行った。コミケ参加経験者からも内容が的確だと評価されたハウツー動画について、森永製菓の担当者は「話題になることを目指して作った動画ですが、反響の大きさには驚いています」と笑顔。昨今の「筋肉萌え」ブームをしっかりと押さえている「10秒チャージ隊」の写真待機列も途絶えることはなく、担当者は「意外と男性の方にお姫様抱っこが好評で。女性の方にも喜ばれています」と初出展ながら手応えを感じている様子を見せていた。
3回目の出展となる日本国際映画著作権協会は、イベント限定のオリジナルDVD「教えてストップちゃん! ~STOP! 違法ダウンロード編~」を配布。同DVDでは、人気声優の豊崎愛生が、違法ダウンロード防止について解説していく。同団体の担当者は豊崎の起用理由について、「知名度がまず一つの理由です」と豊崎が人気声優として確固たる地位にあるという分析の基の起用だと説明。その効果も実感しているようで、「啓発DVDを自ら取りに来ている。こんな風景はなかなかありません。違法行為を啓発する内容を見ていただけるということはとてもありがたい」とコミケならではの現象に喜んでいた。
コミケを機にキャラクター事業を始めた企業もある。今回初出展を果たしたカンロ株式会社は、自社応援キャラクター「うめのたん」のグッズを販売。会場の人の多さに驚いているという担当者は、初出展を決めた経緯を「コミケ前から企画自体はあって、コミケに出られたらいいなとは思っていましたが、まさか受かるとは」と笑み。無料配布を行っていたCDは、1日目11時ごろには配布終了していた。「うめのたん」の今後の展開として、アニメ化もされたソーシャルゲーム「ガールフレンド(仮)」とのコラボも決定しているという。次回参加については、「今回の様子を見てですが、できたら次回も考えたいです。まずは来年まで活動を続けることが目標ですね」とコメント。
一般企業からもいまや一大イベントとして熱視線が送られているコミケ。人気作品とコラボしていても行列がなかなかできない企業もある中、独自のアピール方法で臨む会社や団体が増えてきた。コミケ参加者に受け入れられるコンテンツ作りは一筋縄ではいかないようだ。(編集部・井本早紀)