監督になるのが怖かった!ピクサー新作短編クリエイターを救った父の存在
第88回アカデミー賞
現地時間23日、アカデミー賞短編実写映画賞と短編アニメ映画賞の上映会がアメリカ、ロサンゼルスで行われた。上映後のQ&Aには候補者たちが出席。ディズニー/ピクサーが手掛けた『アーロと少年』(日本公開3月12日)の同時上映作品『ボクのスーパーチーム』のサンジェイ・パテル監督も登壇し、同作について語った。
パテル監督は、ピクサーのアニメーターとして『トイ・ストーリー2』『モンスターズ・インク』などに参加。『ボクのスーパーチーム』はパテル監督が、自身の父親との関係からアイデアを得た作品で、ピクサーにとって、初めて実話を基にした短編作品となった。
描かれるのは、ヒンズー教徒の父親と、テレビ番組のスーパーヒーローに夢中な少年サンジェイの物語。サンディにはかつての監督の姿が投影されており、劇中では、父親の祈りに付き合わされたサンジェイが想像する、ヒンズーの神々がヒーローのように悪魔と戦う世界が展開する。
ピクサーでの経験を経て、新たなインスピレーションを得るための「窓」が開いたというパテル監督は、年齢を経てヒンズー教の背後にある物語にひかれ、「それからは、仕事の後や週末に絵本やグラフィックノベルを描いたりしていました。その状況には満足していたのですが、日中はピクサーで仕事をして、自宅でこの作業をすることに限界を感じてきて、どちらかを選ばなくてはならなくないと思うようになったんです」と語る。
幸運なことに彼の作品はジョン・ラセターの目にとまり、同作の制作を薦められることに。ところがパテル監督は「監督になるなんて信じられなかったですね。自分の仕事をして、誰も僕のことなんて気にしない状況が気に入っていたから。誰かに注目されて、誰かのお金で作品を作るなんて、とても恐ろしかった」と苦笑い。最終的にパテル監督が相談した相手は父親だったといい、「父は、ピクサーが僕にやってほしいということにトライするべきだと言ったんです。彼は、これが仕事ではなく、僕の義務だと思ったんですね。だから、恐怖から自分を解き放って挑戦しました」と明かすと、会場は温かい拍手に包まれた。(編集部・入倉功一)