二階堂ふみ、人間と金魚の衝撃のラブシーンを語る
詩人で作家の室生犀星の同名小説を映画化した石井岳龍監督の最新作『蜜のあわれ』に主演した二階堂ふみが、「美しい少女の姿になって老作家と恋に落ちる金魚」という役に込めた思い、そして老作家役の大杉漣と演じた幻想的なラブシーンについて語った。
孤独な老作家と、金魚“赤子”の奇妙な関係をつづった本作。二階堂は赤子について「赤子は母親やこれまで出会った女たちへの思いから、老作家が頭の中で生み出した存在だと思います。ですから、常に老作家とのつながりを意識して演じました」と説明。石井監督は2人の世界を、脚本家の港岳彦と多重的に構成したという。「老作家の妄想であると同時に、それを書いている彼自身の物語でもあります。赤子から見た人間の悲しさやいとおしさなど、見方によりいろんな解釈ができるでしょう」。
老作家と赤子の関係は、次第に密になっていく。赤子が足で老作家を愛撫すれば、老作家は彼女が裸身にまとった薄い尾びれに口づけをする。「人間じゃない役でもあり、何だか不思議な気持ちになりました」と語る二階堂。石井監督が心がけたのは、俳優を魅力的に見せること。「二階堂さんの動きや感情表現を、最大限にホット&リアルに伝える。そのことに特に力を注ぎました」。
気まぐれで、次に何をしでかすかわからない赤子。表情から仕草まで、多彩な一面をのぞかせた二階堂は「全身を使って表現することの面白さを実感した」と撮影を振り返る。
デジタルカメラではなくフィルムで撮影された本作は、映画だからこそ可能な表現が重視されており、その結果、原作の持つ美しさやエロティシズム漂う世界が見事に構築されている。(取材・文:神武団四郎)
映画『蜜のあわれ』は新宿バルト9ほかにて4月1日より全国公開