ハナレグミ、音楽の方向性を再発見!是枝裕和監督から学ぶ
公開中の是枝裕和監督の最新作『海よりもまだ深く』のトークイベントが1日、都内で行われ、本作で主題歌「深呼吸」と劇中音楽を担当したハナレグミ(永積崇)が、是枝監督とともに登壇し「自分がどういう音楽がやりたいか改めてわかった」と心境を語った。
『歩いても 歩いても』でゴンチチ、『奇跡』でくるり、『海街diary』で菅野よう子など、音楽面でも注目される是枝作品。ハナレグミことシンガー・ソングライターの永積は、今回の依頼を受けた時のことを「自分にできるだろうかとドキドキで、監督の事務所に伺ったんですが、監督は何も注文されず『いいものになりそうだね』と穏やかにおっしゃるばかりで」と笑顔で語りながら「すでに完成していた映像(本作)を繰り返し観て、自分の過去の時間と重なる点がたくさんあると思った。主人公の良多が、自分は変わろうと思った時、一回背を伸ばして深く呼吸するんだなと映像で気づいて『深呼吸』というタイトルにしたんです」と明かし「映像を観ているうちに、いつの間にか、自分も良多になっていましたね」と振り返った。
これに対して是枝監督は「『深呼吸』というタイトルの意味を聞いた時、永積さんがこの映画の構造をガチッとつかんでいることがわかって、感動しちゃったんです。良多は、自分の大きさが余っちゃって、背中を丸めて生きている男。それが一瞬だけ背を伸ばす、そこからエンディングが始まるんだけど、永積さんはそこをつかまえた。すごくいいコラボレーションができたと思います」と満足そうに永積に笑顔を返した。
「本作を観る人へのメッセージは?」という問いに、永積が「今回の映画音楽の経験で、自分がどういう音楽がやりたいか改めてわかった気がして、作品を観た人が自分のことを反すうするような表現もあるんだなと、監督から教わりました」と話すと、是枝監督も「ここに映っているものすべてがなくならないでほしいけど、でもなくなってしまうんだな、という愛惜の気持ちで撮りました。消えていくものへの愛情を映画に残せたらいいと思っています」と作品への思いを明かした。
是枝監督が9歳から28歳まで、実際に暮らした東京都清瀬市の旭が丘団地で撮影された本作。夢を諦めきれないダメ男の良多(阿部寛)が、元妻(真木よう子)や息子と、たまたま集まった良多の母(樹木希林)が暮らす団地の実家で、台風が通り過ぎるまでの時間を共にする一夜を描く。今年の第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門に出品された。(取材/岸田智)
映画『海よりもまだ深く』は全国公開中