ブラックパンサー監督、黒人映画の少なさが不思議「スポーツと比べて…」
第71回カンヌ国際映画祭
現地時間10日、映画『ブラックパンサー』を記録的大ヒットに導いたライアン・クーグラー監督(31)が第71回カンヌ国際映画祭のトークイベントに出席し、黒人映画に対する思いや、同作における女性キャラクターの存在感の大きさなどについて語った。
カンヌ映画祭ある視点部門に出品された長編デビュー作『フルートベール駅で』(2013)で初監督賞に輝くなど、カンヌには思い入れがあるというクーグラー監督。監督第3作となる『ブラックパンサー』はヒーロー・ブラックパンサー(チャドウィック・ボーズマン)をはじめ、メインを黒人キャストでそろえた画期的なマーベル大作で、全米では歴代3位の興行収入を上げるなど社会現象化したことが記憶に新しい。
アメリカで黒人映画をこれほどまでにヒットさせるという快挙を成し遂げたことについて聞かれたクーグラー監督は、少し考えてから「結局はビジネスだと思うんだ。僕は昔スポーツをやっていたから、ずっと考え続けてきたことがある」と切り出す。「そう遠くない昔、野球チームのオーナーたちは、白人の客が見に来なくなるから、黒人やヒスパニックの選手はフィールドに入れたくないと言っていた。バスケットボールでも黒人の選手はいなかったと父に聞いた。でも、僕が育った1990年代は、NBA(北米プロバスケットボールリーグ)の選手は全員黒人だった。……だから、どうして映画界ではもっと黒人映画を作ることができないのか、ということなんだ」とそもそも黒人映画が成功する下地はあったはずと不思議に思っていたと明かした。
そのほか『ブラックパンサー』が特別な点としては、男性ヒーロー映画でありながら、女性キャラクターが今までになく重要な役割を果たしていることが挙げられる。クーグラー監督は「男性キャラクターよりもっと重要だと言えると思う。ブラックパンサーがいなくなり、女性たちがストーリーを導くパートは、僕のお気に入りだ。新しいと感じてもらえたと思う」と自信を見せ、「彼女たちは家族を率いていて、とても賢い。僕はそういう女性たちに囲まれて育ったんだ」と自身の経験に基づいた描写だとコメントした。
22歳の黒人青年が警察官に銃で撃たれて死亡するという実際に起きた事件を基にした『フルートベール駅で』、『ロッキー』シリーズのスピンオフ『クリード チャンプを継ぐ男』、そしてマーベルの『ブラックパンサー』と、クーグラー監督がこれまで手掛けてきたのは全て、広い意味での“原作もの”だ。次回作については「わからないんだ。いつかオリジナル作品もやりたいと思う。でもそれと同時に、原作ものをやることを恥ずかしいとも思わない。スタンリー・キューブリックもいつも原作ものをやっていたが、偉大な監督だ。でも、近いうちにオリジナルもやりたいね」と語っていた。(編集部・市川遥)
第71回カンヌ国際映画祭は現地時間19日まで開催