ゆうばり映画祭、さえない高校生3人組を描いた映画にグランプリ!白石和彌監督「衝動が迫ってきた」と評価
北海道夕張市で開催された「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019」クロージングセレモニーが10日にゆうばりホテルシューパロで行われ、鳥取県出身東京在住の30歳、森田和樹監督の『されど青春の端くれ』がファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門のグランプリを獲得した。
さえない童貞高校生3人組による悶々とした日常を描き出した本作。ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門の審査委員長を務めた白石和彌監督からグランプリを告げられた森田監督は声を詰まらせながら「2年前に難病にかかってしまい。映画をやめようかと思っていましたが、続けてよかったなと思います」と感謝のコメント。白石監督は「映画自体は(技術的に)見づらい映画でマイナス点も多かった。音も聞こえづらいし、男性目線で女性への共感が得られづらいんじゃないかと思いました」と前置きしつつも、「しかし森田監督がこれを描きたいんだという衝動が一番迫ってきた作品。(今回の審査員を務めた女優の)長谷直美さんも評価されたということも決め手となった」と本作を選出した意図を説明した。
一方の森田監督は「病気で自宅療養をしている時に天井を見ていて、このままじゃダメだなと思った」ことが映画作りのきっかけになったそうで、「映画監督になりたいというよりは、単純に映画をやりたいという気持ちだけでカメラを回したので、技術がどうとかは気にしていなかった。だから今となってはそこは反省していますが、でも今はただただ映画を作りたいです」と決意を語った。
これまで冬の風物詩として親しまれた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」が冬に開催されるのは今回が最後。今年の映画祭は、運営スタッフの変更、メイン会場の変更、上映会場や日数などの縮小といった懸案事項が多々あったが、計4日間で1万1,669人を動員。数字的には昨年よりやや少ないものの、昨年に匹敵する支持を受け、例年通りの盛況となった。今後は夏開催を予定しており、本映画祭の深津修一エグゼクティブプロデューサーは「来年はスクリーン数を増やしたいと思っている。夏に開催することで、野外フェス感が強いイベントにできたらと思っている」と展望を語った。(取材・文:壬生智裕)
■「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019」コンペティション部門の受賞結果は以下の通り
<ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門>
グランプリ:『されど青春の端くれ』(森田和樹監督)
審査員特別賞:『赤い原罪』(ムン・シング監督)
北海道知事賞:『桃源郷的娘』(太田慶監督)
シネガーアワード:『されど青春の端くれ』(森田和樹監督)
<インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門>
グランプリ:『極東ゲバゲバ風雲録』(中島悠作監督)
優秀芸術賞:『ムーン・ドロップス』(Yoram Ever-Hadani監督)
優秀芸術賞:『5つ目の記憶』(小野寺しん監督)
優秀芸術賞:『M&A』(宮城伸子監督)
<ファンタランド大賞(観客賞)>
グランプリ:『いつくしみふかき』(大山晃一郎監督)
市民賞:「第1回ゆうばり自主怪獣映画まつり」
イベント賞:斎藤工セレクション&アニメワークショップ
人物賞:安井謙太郎『ニート・ニート・ニート』