『ターミネーター』はサラ・コナーの映画!シリーズ正統続編、監督のこだわり
SFアクションの傑作『ターミネーター2』(1991)の正当な続編となる『ターミネーター:ニュー・フェイト』。生みの親であるジェームズ・キャメロンがプロデュースを担当した本作を監督したのが、『デッドプール』(2016)を大ヒットさせたティム・ミラーだ。ハンガリー・ブダペストの撮影スタジオでクライマックスシーンを撮影中だったミラー監督が、本作にかける思いを語った。
「映画ファンなら誰もが、『ターミネーター2』を観たとき、当時の自分が何をやっていて、どこで観たのかまで覚えているだろう。僕はLAに引っ越してきた頃で、ウェストウッドの映画館で観たんだ」と振り返ったミラー監督。「まさに啓示とも言える作品だった。とてもリアルで、キャラクターたちにもすごく説得力があった。そうした要素はアクション映画ではあまり見られないものだ。だからこそ、良くできたアクションやSF映画ほど素晴らしいものはないと思う」と語る。
そんなミラー監督が、プロデューサーに名を連ねるデヴィッド・エリソンからオファーを受けたのは『デッドプール』の公開前で、まだ脚本さえなかったという。しかし、キャメロンが手掛けた1作目と2作目の大ファンだったミラー監督は「他の『ターミネーター』作品には不発に終わったものもあった。ファンとして、そういった映画のように終わらせたくはなかったんだ。シリーズの崇高な未来を見たかったし、それを手助けしたかった」とオファーを快諾した。
『ターミネーター』シリーズにおいて、何よりミラー監督が惹かれたのは、リンダ・ハミルトンが演じるサラ・コナーのストーリーだった。それが『ニュー・フェイト』を、2以降に製作された続編とは違うものにしているという。「リンダは(『ターミネーター2』以降の)他の映画には戻ってこなかった。だから、本質的に違う方向へ行くしかなかったんだ。あれらは『ターミネーター』の世界観を受けて作った続編だった。でも、僕にとって『ターミネーター』は、常にリンダ(サラ)についての映画だった」。
また本作では、リンダに加え、マッケンジー・デイヴィス、ナタリア・レイエスと3人の女優たちが演じるキャラクターが活躍。それに対し「フェミニズムの波に乗ろうというあからさまな試みだ」などの声があがったことは、ミラー監督にとってかなり心外だった。「ライターズルーム(脚本家チームが集まる場所)に座っていたから言える。そういうことには全く関係がなかった。オタクたちが集まって、『こうしたらクールじゃないか?』って言い合いながら考えた設定だよ。世界的な出来事に対して、大きな役割を果たすべく、最もそういうことをしそうにない人が立ち上がることを描いているんだ」
そして、4作目以外の『ターミネーター』シリーズに出し続けているのがT-800役のアーノルド・シュワルツェネッガー。「今作のアーノルドは最高さ。これまで見たことがない彼を見れるよ」と語るミラーだが、シュワルツェネッガーとリンダのツーショットに、ゾクゾクしないファンはいないだろう。
さらに、迫力のアクションも見どころなのは言うまでもない。「今回のアクションはユニークで、それぞれのキャラクターが持っている、違う強さを描いた。何かが爆発していたって、その渦中にいる登場人物たちのことが気に掛からなければ何の意味もない。ジム(キャメロン)は、それをとてもうまくやるんだ。『ターミネーター2』のアクションが退屈になることは決してない。彼の映画は、(3幕構成でいえば)怒涛のような第3幕でよく知られているけど、僕もフィルムメーカーとして、ジムの伝統を続けないといけないと感じたんだ。この映画では、第2幕からアクセルを踏み続けることになる」
ちなみに、今作のアメリカにおけるレイティングはR指定だが、そこにもミラー監督のこだわりがあった。「PG13とRの違いは、単にビジュアルエフェクトの問題なんだ。誰かを刺した刃が体の反対側に突き出ているのか? 血はどれだけ出るのか? っていうね。僕は根拠のない暴力のファンだったことは1度もないよ。『デッドプール』はそうだと責められたけど、例え可能だとしても、カメラの前で人が半分に切られる表現をすすんでやりたいわけじゃない。ただ、実際に起きていることを、起きてないように見せることだけはしたくないんだ。気にかけているのはリアリティーなんだよ。もし銃を撃てば、その結果としてひどいことが起きる。刃物を武器にしてもひどいことになるだろう。僕はそれをリアルに描写する。エグくしたいわけじゃないんだ」(吉川優子)
映画『ターミネーター:ニュー・フェイト』は11月8日より全国公開