チャン・ツィイーが語る、東京国際映画祭のあるべき姿とは?
第32回東京国際映画祭
第32回東京国際映画祭が5日、東京国際フォーラムで行われたクロージングセレモニーと共に閉幕し、コンペティション部門の審査委員長を務めた中国の人気女優チャン・ツィイーが合同インタビューに応じた。「オープニングが昨日のことのよう」と名残惜しそうな表情を浮かべながら、新たな才能との出会い、映画業界の未来、さらには本映画祭の在り方について熱く語った。
デンマークの作品『わたしの叔父さん』が東京グランプリに輝いたが、その要因についてチャンは「今、映画作りの環境が大きく変わってきていて、ハリウッドをはじめ世界中のフィルムメーカーが、大衆受けする商業映画に傾倒している。これはこれで否定はしませんが、その一方で、映画を心から愛する観客、あるいは映画人にとっては、何らかの価値がある作品、あるいは芸術性の高い作品も観たいという欲求もあります。この作品にはそういうものが随所に詰まっていた」と改めて明言。
規模が小さくても質の高い作品を、より多くの人に紹介するため、審査委員長として「有意義な仕事ができた」と自負するチャン。「デンマーク出身の映画製作者も知らなかった小さなプロダクションの作品ですが、グランプリを獲得したことによって、素晴らしい輝きを放っている。それがとても美しく、今は心が満たされている状態」と笑顔を見せる。「発掘する精神、というのはとても大切。新しい人材を発掘すれば、新しいエネルギーがそこに生まれる。脚本も役者も監督もそうですが、こういう新しい映画作りの力を発見できれば、映画業界はどんどん発展していくと、わたしは信じている」と力説した。
また、本映画祭の審査委員長を務め、改めて気付いたことを問われたチャンは「例えば、カンヌ国際映画祭は世界中の人々が知っていますし、最高峰の映画人によるマスターピースが出品されています。では、東京国際映画祭には、いったいどういう作品が集まるのか? そういうところの『独自性』というものをもっと明確にすることが必要かもしれません」と持論を展開。ただ、チャン自身にとっては憧れの映画祭だったようで、「ずっと『芸術性』というものを追求してきた素晴らしいDNAを持っているので、今後もこの部分を引き続き求めていくべきだと思います」と願いを込めた。
本映画祭2日目には、自身の映画デビュー作である『初恋のきた道』(1999)が特別上映され、20年前の初々しい姿がファンを歓喜させたが、これを振り返ったチャンは「もう感謝しかない」と満面の笑み。「わたしの女優人生のなかで最も美しかった時代の様子、表情を記録してくれた映画。あのパフォーマンスは2度とできない。Q&Aセッションには当時のファンはもとより、今回が初めてという方もたくさん来ていただいて。時代を超えて感動を共有できるというところも、映画の素晴らしいところですよね」と締めくくった。(取材・文:坂田正樹)