【日本最速レビュー】『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』はマーベル映画史に名を刻む凶悪ヴィランの強烈ラブストーリー
スパイダーマンの宿敵をダークヒーローとして描いた『ヴェノム』(2018)の衝撃から3年。続編となる映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は、マーベルコミックの中でも一二を争う凶悪なヴィラン・カーネイジの映像化を実現させた。マーベルファンが待ち続けたカーネイジは、スクリーンに登場するだけで得体の知れない恐怖と絶望感を放ち、マーベル映画史に名を刻む凶悪っぷりを見せる。
続編でのカーネイジ参戦は、前作『ヴェノム』の時点で示唆されていた。同作のエンドクレジット中に挿入された映像では、ジャーナリストの主人公エディ・ブロック(トム・ハーディ)が取材のため、連続殺人鬼クレタス・キャサディ(ウディ・ハレルソン)と面会。パーマがかかった赤髪で不敵な笑みを浮かべるクレタスは、「俺がここを出たら大虐殺(カーネイジ)になるぞ」と警告する。クレタスの言葉通り、続編はクレタスがカーネイジへと変貌し、己の鬱憤を晴らすかのように人間を次々と殺戮していく。
原作コミックのカーネイジは、ヴェノムがスパイダーマンと共闘しないと倒せなかった強敵だ。目を覆いたくなる暴力的な攻撃も多く、PG-13(13歳未満の鑑賞には保護者の同意が必要)指定の映画で、その残虐性を表現できるのか不安に思うだろう。しかし、カーネイジの登場シーンでその不安は吹き飛ぶ。血で染まったようなおぞましい見た目はコミック版を踏襲しており、暗闇から放たれる咆哮は観客を身震いさせるほど強烈。グロテスクな触手を伸ばすと絶望感が増し、R指定ギリギリの攻撃を繰り出す。
興味深いのは、ストーリーが進むにつれてカーネイジが進化していくこと。登場時と終盤では明らかに見た目やパワーが異なるため、徐々に凶悪化していくカーネイジを見るのも楽しい。カーネイジへと変貌するウディ・ハレルソンの存在感も抜群で、殺戮を楽しむクレタスを狂気たっぷりに悠々と演じている。
強敵カーネイジを迎え撃つエディとヴェノムの関係性も、続編ではより微笑ましく、ユーモラスだ。前作から数年が立ち、地球での生活に慣れたヴェノムは人間味が増し、宿主であるエディを慰めたり、文句を言い合い、終いにはアパートを滅茶苦茶にするほど殴り合う。メガホンを取ったアンディ・サーキス監督は、本作をラブストーリーと表現しており、エディとヴェノムは倦怠期を迎えたカップルのように見えてくる。誰よりもキャラクターを熟知するトム・ハーディが原案として参加したことも功を奏しており、90分弱の上映時間の中でも、エディとヴェノムの物語が丁寧かつ繊細に描かれている。
ラブストーリーという点では、殺人鬼クレタスにも恋の相手が存在する。音波を利用した叫び声であらゆる物を破壊するシュリークだ。クレタスにとって唯一の生きる希望はシュリークであり、シュリークもまた、離れ離れだったクレタスとの再会を待ち望んでいる。二人の関係性はストーリーにおいても重要な要素であり、シュリークの脆さを全面に出したナオミ・ハリスの演技も光る。
狂気むき出しで激突するヴェノム&カーネイジのアクションと、人間の愛を訴えかけるハートフルなストーリーで観客を魅了する『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』。クライマックスの一大バトルは、狂気と狂気がぶつかり合う緊張感と共に、原作コミックの二大キャラクターが戦う興奮も味わえるだろう。もちろん、本作はマーベル映画であるため、最後まで席を立たないことをオススメしたい。(編集部・倉本拓弥)
映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は12月3日全国公開