是枝裕和監督、ソン・ガンホのカンヌ受賞は最高のゴール 韓国での猛反響を明かす
映画監督の是枝裕和が13日、都内で行われた最新作『ベイビー・ブローカー』の凱旋記者会見に出席。コンペティション部門に出品されたカンヌ国際映画祭での快挙や、主演男優賞に輝いたソン・ガンホとの共同作業について振り返った。
本作は、是枝監督が韓国の製作陣や俳優らと長年構想を練ってきたオリジナル企画を映画化したヒューマンドラマ。「赤ちゃんポスト」に預けられた赤ん坊と周囲の人々のエピソードが描かれる。第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出され、クリーニング店を営む借金まみれの主人公・サンヒョンを演じたソン・ガンホが主演男優賞を受賞した。
この日は、是枝監督にとって映画祭後初の公の場での会見となった。冒頭、ソン・ガンホ受賞の瞬間を振り返って「受賞式に参加して、ソン・ガンホの名前が呼ばれた時に、なるほど、この作品にとって最高のゴールだなと。その夜、韓国チームも集まってお祝いをしたのですが、みんな幸せな夜でした」と感想を述べる。続けて「役者が褒められるのが一番嬉しい。(『誰も知らない』で)柳楽(優弥)くんがもらった時は、柳楽くんが日本に帰っていたので(現地に)僕しかいなかった。役者さんと抱き合ったのは初めてで特別な夜になりました」と振り返る。
カンヌ後は韓国へ行き、韓国での舞台あいさつなどにも参加した是枝監督。韓国での反応を聞かれると「僕は単館から始めた監督で、今回1,600スクリーンっていうことで大丈夫なのかなと。僕のキャパシティーをはるかに超えているなと思いました。順位をみんなが気にしている感じが、いい時はいいけど、そこで戦ってきた人間ではないので」と大掛かりな上映には慣れない様子だが、「みなさん嬉しそうで良かったです」と話す。
韓国の空港に降り立った際には「空港が揺れていました」と述べるなど、現地の反応はすごかったという。「職員の人が職場を離れてついてきていたので、大丈夫なのかなと。出口を出た時に一般の方が待ち構えていて、国民的なスターが韓国人が主演男優賞を獲るのはオリンピックの金メダル以上なんだなとわかりました。舞台あいさつは熱狂的な感じ。叫び声がずっと聞こえている感じ。でも見た方の反応は悪くはないと思います」
ソン・ガンホとの仕事について問われると、彼の印象について「楽しい人。その場にいるとみんながニコニコしちゃう。なかなかいないタイプ」と紹介。クランクイン前にポン・ジュノと食事をしたそうで「いろいろ不安はあるでしょうけど、ソン・ガンホが現場に来たら全てはソン・ガンホのペースで進んでいくから心配いらない」と声をかけられたと明かす。是枝監督は「その通りだった」と撮影現場でのソン・ガンホの存在感を讃える。「彼はテイクごとに違う。それを僕がどこまで追えるかだった。自分のお芝居に対する意識が高く、それをクランクアップまで続けてくれた」と称賛の言葉を口にした。(取材・文:名鹿祥史)