『バズ・ライトイヤー』監督が目指した人間臭いヒーロー像
映画『トイ・ストーリー』シリーズに登場する人気キャラクターのルーツをたどるディズニー&ピクサー最新作『バズ・ライトイヤー』(全国公開)を手掛けたアンガス・マクレーン監督が、本作に込めたメッセージを語った。
本作は『トイ・ストーリー』のアンディ少年が、“おもちゃのバズ”をほしがるきっかけとなった、スペース・レンジャー、バズ・ライトイヤーの冒険を描くSFアドベンチャー。本作のバズは、有能で頼もしいヒーローとして登場するが、自分の力を過信したために、1,200名もの仲間と共に危険な惑星に取り残され、責任を取るため、地球に帰還するための危険なハイパー航行に1人で挑み続ける。
「この映画の魂は、誰もが親近感を覚える人間の感情がベースになっている部分にあると思います」というマクレーン監督は「何かを達成したい、失敗を帳消しにしたい、自分の仕事をやり遂げたいという思いは、誰もが持っているものだと思います。それに、仕事で結果を求めるあまり、人間関係を見失ってしまうこともよくありますよね」と完璧なヒーローであるバズが持つ、人間臭い魅力を語る。
ハイパー航行の結果、数十年後の世界に辿り着いてしまったバズは、新たな仲間との冒険を通して、取り戻せない過去や失敗との向き合い方、責任の取り方、仲間の大切さを学んでいく。「道半ばで何かを失敗をしてしまった時、それをなかったことにしたいとか、その仕事を最後まで終わらせたいと思うのは自然なこと。そうして私たちと同じように間違いを犯してしまったヒーローが、そんな自分を許すことができるようになっていく姿からは、学べる物があるのではないかと思います」
ちなみに本国アメリカでは、バズが、愛する人のためではなく、仲間やコミュニティーのために奮闘することに対して、不満の声もあったという。マクレーン監督は「アメリカでは、そこに少しフラストレーションを感じるという声もありました。主人公が恋人のために戦うような、古典的な英雄譚を求める人もいますが、アメリカでは個人主義が強い点も理由でしょう」と語る。
「もともと私は『七人の侍』『ナバロンの要塞』『ミッション:インポッシブル』のように、スペシャリストが集まってミッションに挑む映画が好きなんです。これらは、共に仕事に取り組む人々を描いた物語であり、映画制作にも通じる部分もあります。映画作りにおいては、時に個人よりも全体を考えることが大切であり、そういった点も盛り込みたかった。この作品には、コミュニティーというもの、みんなで何かに挑むことの強さを伝える強いメッセージがあります。また、映画作りについての作品でもあると思うのです。4年間かけて一本の作品に取り組んだ後、気づけば外の世界が一変しているような気分になることもありますからね」(編集部・入倉功一)