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【ネタバレ】『Dr.コトー診療所』何がそんなに胸アツなの?

胸アツ!
胸アツ! - (C) 山田貴敏 (C) 2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

 ドラマから16年ぶりに制作された映画『Dr.コトー診療所』(公開中)は、吉岡秀隆演じるコトー先生こと五島健助が、絶海の孤島“志木那島(しきなじま・架空の島)”で、人々の命を守りながらともに生きていく姿を描く医療ヒューマンドラマだ。現在大ヒットを記録中の本作は、なぜ多くの観客に支持されているのか、その胸アツポイントを紹介しよう(以下、映画の内容のネタバレを含みます)。

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幸せなその後の姿

 長く続く作品の場合、視聴者はその登場人物たちに親近感を持つ。本作も、映画化が報じれた直後から「お帰りー!」「懐かしい」「みんなに会えるの楽しみ!」という声がSNSにあふれていた。視聴者にとって登場人物たちは、遠くに住む友人か、親しい親戚のような存在なのだ。その姿が次々とスクリーンに映し出されるのだから、冒頭から胸アツになるのは当たり前。しかも、ドラマ第2期で診療所の看護師として働いていた仲依ミナ(蒼井優)は、なかなか粋な登場の仕方をする。

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 公開前、蒼井の出演は発表されていたものの、島の看護師として紹介されていたのはコトーの妻となった妊娠7か月の彩佳(柴咲コウ)と、今回のゲストで島出身の西野那美(生田絵梨花)だけ。ミナのポジションが気になった人も多かっただろうが、ふたを開けたら彼女は、診療所を手伝っている和田一範(筧利夫)と会話するスマホの画面での登場だった。2人は結婚して5人の子持ちになっていたのだ。自分にべたぼれの和田をうまいこと操縦して、ミナは幸せに暮らしているようだ。

 また、第1期のときに妊娠して島に戻り、父である漁労長・安藤重雄(泉谷しげる)に激怒されていたリカ(伊藤歩)も、重雄とのリモート画面で幸せそうな姿を見せる。さらに神木隆之介は、母である西山茉莉子(大塚寧々)に会いに島に渡ってきた少年・杉本竜一として第1期に出演していたが、本作では都会で働くオシャレな会社員となっていた。母との関係も良好のようだ。

不幸続きの原親子

 一方、テレビドラマシリーズのときから苦労が多かった原剛利(時任三郎)、剛洋(富岡涼)親子の動向にも注目が集まっていたが、またしても彼らには不幸が次々とふりかかる。剛利は映画冒頭で足に大けがを負い、コトーの手術で切断は免れるものの、歩けるようになるかわからない状態に。剛利は、剛洋の学費をねん出するために以前にも一度漁船を手放したことがあったが、今回もまた、漁師生活の危機に陥ってしまった。

 さらに、コトーに憧れて医者を目指していたはずの剛洋は、誰にも告げないまま大学を中退していた。彼が島で医師として働くことを期待していたコトーらは落胆するが、剛洋も期待に応えられないことに苦しんでいた。

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 SNSでは「タケヒロには医者になっていてほしかったな」「残念すぎる」といった声もあったが、「この親子のエピソードに一番感動した」という人もおり、応援し、見届けたい気持ちになる大きな胸アツポイントだ。

命の瀬戸際での奮闘

 本作は、簡単には答えの出ない大きな命題に挑み続ける。中でも、自らを省みないコトーの献身のぜひは深刻だ。財政難から近隣島々との医療統合の話が持ち上がり、役所職員の坂野孝(大森南朋)からコトーに島を離れる提案がなされた。さらに、コトー自身が病に侵されていることが判明する。彩佳の乳がんの際に主治医だった鳴海慧(堺雅人)は入院加療を強く勧めるが、島を離れることをためらうコトーは自ら治療することを選択する。

 コトー自身の命が危険にさらされる中、島は巨大台風に襲われ、診療所は野戦病院状態に。さらに、彩佳が切迫早産の疑いで動けなくなり、那美の祖母・美登里(藤田弓子)が持病で倒れ、コトーが診てきたノブおじの心臓が止まる。研修でやってきた高橋海人演じる新米医師・織田判斗(はんと)が「無理だろ」とつぶやく中、誰の命もあきらめないと懸命に心臓マッサージを続けるコトー。だが、そのコトーも意識を失ってしまう。次々と降りかかる困難に、決してあきらめることなく立ち向かうコトーの姿は、最大の胸アツポイントだ。

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 ラストシーンでは剛利は漁に出ており、島のみんなは元気に暮らしている。医大に復学できたのかは不明だが、白衣姿の剛洋の姿も。最終的にコトーがどうなったのか、彩佳や那美ら島の皆がどうしているのかは、ぜひ劇場で確認してほしい。特に、離島医療の問題点を挙げ、その限界を間近で見た判斗の選択の行方には、大きな意味があるだろう。

 よそ者だったコトーが島に受け入れられ、必要不可欠な存在となり、やがてその思いが次の世代へとつながれていく。ラストシーンの解釈についてはSNSでも意見が分かれているが、希望を感じさせるラストシーンになっている。精一杯生きる人の営みが続いていくこと。シリーズ開始当初から変わらない名曲「銀の龍の背に乗って」の感動とともに、それを体感できることが本作の素晴らしさだ。(文・早川あゆみ)

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