青年期の岸辺露伴に長尾謙杜を起用した理由 不思議な巡り合わせも
「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの荒木飛呂彦初となるフルカラーの読切で描かれた「岸辺露伴は動かない」の人気エピソードを、高橋一生主演で実写映画化する『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(5月26日公開)。物語は漫画家としてデビュー間もない若かりし露伴の記憶から始まるが、その青年期の露伴を演じるのがなにわ男子の長尾謙杜。キャスティングの経緯を、プロデューサーの土橋圭介、井手陽子が語った。
「ジョジョの奇妙な冒険」とスピンオフ「岸辺露伴は動かない」に登場する人気キャラクターの漫画家・岸辺露伴を主人公にした本作。原作は、国内外の漫画家が参加するルーヴル美術館のバンド・デシネプロジェクトの描き下ろし作品として2009年に発表された。相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むこともできる特殊能力“ヘブンズ・ドアー”を備えた露伴が、担当編集・泉京香(飯豊まりえ)と共に「この世で最も黒く、邪悪な絵」の謎を追ってルーヴル美術館に赴く。この絵は、露伴が青年期に祖母宅で暮らしていたころ、下宿していた奈々瀬(木村文乃)という女性に教えられたもの。どこか哀し気で謎めいた美しい女性は、露伴の初恋の相手でもあった。
青年期の露伴をキャスティングする際、「まだ完成される前の露伴」が前提になったと土橋。「こだわりが強く自信家の人気漫画家という、一生さん演じる露伴と比べると、まだ漫画家としては駆け出しですし、スタイルも確立していない。露伴が露伴になる以前とでも言えばいいでしょうか。未成熟さが残る人物像をイメージしていました。それと、監督の渡辺(一貴)は加えて“憂いも必要”と言っていましたね」
そのイメージを演じられるのは誰なのか。ある日の会議で、渡辺一貴監督が土橋、井手らに挙げたのが長尾の名だったという。
「渡辺は、イメージに合う人を探して日夜ネットで画像検索をしていたんです。ある日のキャストの検討会議で、『この方がいいと思うんですけど』と突然出してきたのがなにわ男子の長尾謙杜さんだったんです。しかも本人はなにわ男子が今人気のアイドルグループと言うことを知らずに! 長尾さんの画像から発せられた何かをキャッチして、それだけを頼りに提案してきたんです。でも見せてくれた画像には憂いがありました」(土橋)
井手は、長尾が関西ジャニーズJr.だったころからライブ、舞台などで魅力を感じていたといい、「当時は、まだ多くの作品に出演されてはいなかったので、まさか監督が提案してくださるとは」と感激したそう。「さらに驚いたのが、そのあとジャニーズさんにオファーのご相談に伺った際にご本人が『ジョジョ』ファンだったことでした」
主演の高橋や監督の渡辺が熱狂的な「ジョジョ」マニアだというが、土橋は「これまでもキャスティングやプロジェクトに関わる人たちと驚くほどそういう巡り合わせが多くて。実際、撮影の際に長尾さんに聞いたら確かに“好きで読んでいた”とおっしゃっていました」と不思議な縁に喜びを隠せない。
長尾の出演が決まり衣裳合わせ、そして撮影が始まると、いよいよ「適役」と確信したと話す土橋と井手。「最初に柘植伊佐夫(人物デザイン監修・衣裳デザイン)さんチームが用意された衣裳を合わせたときに“露伴だ!”と。会津の旅館で撮影されたシーンでは、何か憂いがある雰囲気を感じました」(井手)、「撮影初日、モニター越しに初めて見る長尾版露伴にドキドキするというか。本当に佇まいが美しいと思いましたし、説得力がありました」(土橋)
出演発表時に「原作はもちろん高橋一生さんが演じるドラマ版も視聴者として楽しませて頂いていましたのでこの世界に自分が入ることができ、とても嬉しく思います。原作に登場する露伴先生の過去の一コマ一コマを頼りにたくさん想像して監督の渡辺さんともお話ししながら作っていきました」と喜びを語っていた長尾。放送中のTBSドラマ「王様に捧ぐ薬指」では、橋本環奈演じるヒロインの弟を好演。大河ドラマ初出演となる「どうする家康」では、松本潤演じる徳川家康の異父弟・久松源三郎勝俊にふんし、2023年は長尾にとって俳優として大きな飛躍の年となりそうだ。(編集部・石井百合子)