『エイリアン:ロムルス』最も恐ろしいのはフェイスハガー 監督が徹底した恐怖描写「本物を置いた方がずっと効果的」
SF映画の金字塔『エイリアン』シリーズ最新作『エイリアン:ロムルス』(9月6日全国公開)のメガホンを取ったフェデ・アルバレス監督が、原点回帰にこだわったリアルなホラー描写について語った。
本作の時系列は、リドリー・スコット監督が手がけた『エイリアン』1作目(1979)と、ジェームズ・キャメロン監督による『エイリアン2』(1986)の中間。漂流する宇宙ステーション“ロムルス”にたどり着いた6人の若者たちが、地球外生命体=エイリアンがもたらす絶望に直面する。
アルバレス監督は、リメイク版『死霊のはらわた』(2013)や盲目の老人が強盗に入った若者たちを狩る『ドント・ブリーズ』(2016)などのホラー作品を手がけ、観客を恐怖の底へと陥れた。『エイリアン:ロムルス』では、スコット監督のオリジナル版に敬意を払い、極力CGに頼らず、アニマトロニクスなどの特撮技術で撮影が行われた。
CGによる映像は「スペクタクルやあるスタイルに視覚的な面白さをもたらしたい時には素晴らしい」と切り出したアルバレス監督は、「本作に関して言うと、クリーチャーがそこにいないことが観客に伝わってしまうと、もう怖くはありません。怖さが減ってしまいます」とプラクティカル・エフェクト(現物を利用した特殊効果)の重要性を説く。
「本物のクリーチャーを作り、撮影現場に置いた方が、ずっと効果的だと信じています。(CGIでやるより)遥かに効果的なんです。この映画では、あらゆるものを組み合わせて使っています」
『エイリアン:ロムルス』においては、「1年前に出たばかりのテクニックを使っていますし、40年前や60年前のテクニックも使っています」と新旧の技術を融合させたとアルバレス監督。製作にあたり、引退を考えていた当時のスタッフを呼び戻したという。
「私たちがこの作品でやったように、知らないことがあれば学び、それらが古いものなら、それらを学ぶんです。自然と物事はより効果的で、より速く、より素早い方法へと進化していくものだと思うからです。でも私たちは、手間のかかるやり方、より困難な道を選ぶことにしました。なぜなら、最終的には、その見返りの方が常に大きいと思うからです」
アルバレス監督は、シリーズを代表するゼノモーフ(エイリアン)はもちろん、宿主に張り付いて寄生卵を産み付けるフェイスハガーも実写で製作し、製作現場でラジコンを自ら操作する動画をSNSに投稿していた。
フェイスハガーを「最も恐ろしいクリーチャー」と表現するアルバレス監督は、「もし自分がフェイスハガーとゼノモーフのどちらかと向き合うことを選ぶとしたら、多分ゼノモーフを選ぶと思います。なぜなら、その方が早く死ねますから」と語るほど。「フェイスハガーだと、喉にチューブを入れられて受胎させられ、もう大丈夫だと思っていたら、最悪の事態が待っていて、クリーチャーが胸を破って飛び出してくるんです。それはいい方法ではありません」と続けると、「だから私は、彼らが脅威の最前線にいる姿をもっと見ることができる映画を作りたかったんです」と本作での“大活躍”を予告した。
ホラー描写においては「バイオレンスに重きを置くことはせず、この生き物が現実世界に存在したらどういったものになるかという感じにしたかった」とこだわりを明かすアルバレス監督。「母なる自然は時にとても暴力的になりえます。出産や動物のライフサイクルは、とても暴力的なものが伴います。でも私は、それが本物であり、あるスピーシーズ(種)の誕生のドキュメンタリーのように感じられるように、時間をかけて撮影したかったんです」と熱心に語っていた。(編集部・倉本拓弥)