福本莉子の美の秘密は「上目遣い」 『お嬢と番犬くん』小林啓一監督が演出の裏側語る

累計発行部数336万部を突破する、はつはるの漫画を実写映画化する『お嬢と番犬くん』(公開中)でジェシー(SixTONES)と共にダブル主演を務める福本莉子。これまで葵わかな、桜井日奈子、恒松祐里、堀田真由、西野七瀬、平祐奈、藤吉夏鈴(櫻坂46)、高石あかり(※高=はしごだか)ら数々の女優を輝かせてきた小林啓一監督が、本作で見せた福本の魅力を語った(※一部ネタバレあり)。
本作は、講談社「別冊フレンド」で連載され、2023年9月からテレビアニメも放送された同名漫画に基づき、極道の孫娘であることを隠して普通の青春と恋を謳歌しようとする高校生の瀬名垣一咲(福本)と、彼女の世話係で過保護のあまり年齢詐称をして高校に裏口入学までしてしまう若頭・宇藤啓弥(ジェシー)のもどかしい関係を描くラブコメ。映画『殺さない彼と死なない彼女』(2019)、『恋は光』(2022)などラブストーリーの名手としても注目を浴びる小林啓一監督がメガホンをとった。
福本といえば2020年公開の映画『思い、思われ、ふり、ふられ』で浜辺美波、北村匠海、赤楚衛二と共にメインキャストを務めて以来、『しあわせのマスカット』(2021)、『君が落とした青空』(2022※松田元太とダブル主演)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022※道枝駿佑とダブル主演)など映画主演が連続。昨年は『ディア・ファミリー』『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』と3本の映画が公開。現在、2023年のTBSドラマを映画化した『劇場版 トリリオンゲーム』が公開中。24歳にして、6本の映画主演を務めている。『お嬢と番犬くん』で福本と初タッグを組んだ小林監督は、福本の印象をこう語る。
「これまではあまりイメージとしてなかったのですが、すごくアグレッシブで、運動神経もよくて、いろんなことにトライしてくださる。例えば、一咲が啓弥のテストのさんざんな結果を見て“この点数は何だ!”と叱るシーン。一咲が机をたたくのですが、勢いが過ぎたのか痣ができてしまっているんです。福本さんが“なんか赤くなっちゃいました”とおっしゃっていましたが、そこまでしてくださる方なんだなと。これまで抱いていたイメージとのギャップに驚きました」

福本は、一咲のそうした芯の強さと共に、啓弥が全力で守りたくなるようなひたむきさやピュアさを見事に表現。小林監督が原作者のはつはるから聞いた一咲のイメージは「生まれたてのひよこみたいな感じ」だったという。
「一咲が高校デビューじゃないですけど、高校に入って世間を知るっていうことだと思うんですけど、福本さんにも“生まれたてのひよこみたいな感じ”と伝えていたので、意識してくださったんだと思います。普段は自分に自信がなくておしとやかなんだけど、“番犬=啓弥”に対しては遠慮なしっていうギャップというんでしょうか。そういう感じが漫画においてのお嬢様感なのかなと捉えていました」
福本の美しさを際立たせるために小林監督が特に意識したのが「目」。
「福本さんにお願いしたのが上目遣いにしてほしいということでした。“生まれたてのひよこ”という意味で、一咲は登校時におそらく、顔を伏せがちで上目遣いでいろんなものを見るんじゃないかと思ったんです。コミカルにという意味ではなくて周りの様子を窺うようなニュアンス。そうすると福本さんの目がキラキラして、目の表現がすごく豊かになったんですよね」

撮影中、福本とは頻繁にディスカッションを重ねたといい、とりわけ一咲と啓弥の至近距離でのシーンですり合わせが必要だったと小林監督は振り返る。
「例えばコミカルなシーンから、啓弥が顔を近づけていきなりラブな展開に変わるシチュエーションが多いんですけど、一咲は啓弥に気持ちを気づかれたくないので話をそらそうとしたり、目をそらしたりする。そうしたところの気持ちの切り替えやテンポがすごく難しいと思うんです。ワンシーンの中にラブ要素、コメディ要素とかいろんなことが詰め込まれているのが原作の特徴でもあるので、それを表現するのは至難の業。“どうしてこういう気持ちになったのか”“だったらこういうふうに動いた方がいいのか”といったことは逐次話し合いました。福本さんも論理的にご自分の考えたことを提案してくださいましたし、“ここで振り向いてみる”とかちょっとしたところでアドリブも入れてくださいました」
一咲に関しては手のクローズアップが目立つが、これは事前に小林監督がディレクションしたわけではなく福本の演技から思いついたもの。
「福本さんが無意識に手の芝居もされていて、それを発見した時に取り入れたくなったんです。放課後の教室で啓弥にバックハグされるシーンなんかは意図的なものですが、それ以外はテストなどで“今こういう風にやっていたからそこを撮るからね”って言うと、“え? やってました?”みたいな反応。手の表現が一咲の決意の表れを示しているようでもあって、いくつか入れています」
特に福本が光っていたと小林監督が感じたのが、ラストシーン。「ネタバレになるのでシチュエーションは伏せますが、福本さんの表情に二次元の世界の女の子のような輝きを感じられて、ものすごいイイ顔をしているなと。ちょっとびっくりしました」と舌を巻いていた。福本は今後も『#真相をお話しします』(4月25日公開)、『隣のステラ』(夏公開)の公開を控え、多忙を極める。(取材・文:編集部 石井百合子)