業種に有名人、著名人を起用する場合、たいてい「名前だけ」なんていうのも多いが、金城武はそんなことを許す人間ではなかったのである。本作の制作は一昨年より行われているが、かなりの頻度で綿密な打ち合わせが行われていた。
「最初の打ち合わせでは金城さんに一週間ほど大阪につめてもらいましたよ。毎朝10時から夜6時までずっと会議です。
その後も月に一回くらい大阪本社に足を運んでもらってました。映画の撮影の合間をぬ
ってなので大変だったと思います」
では具体的に、制作者としてどのような部分に携わったのだろうか。
「ボスキャラのデザイン案をはじめ、いろいろやってもらってます。実際ボスも何体も考えてもらって、いくつかボツもありました。
だから“金城さんがやったから採用します”じゃなくて、本格的に何度もやりとりしてます。
よく金城さんは会議中にその場でラフスケッチを書いて、“こんなんどうかなぁ”なんてやってましたよ。僕らも“それ絵がヘタでわかんないよ”とか遠慮なく言ってましたけど(笑)」
しかし、ゲームは実際に作って動かしてみるまで、おもしろいかどうかはわからない。作っては壊し、また作っては壊す作業。これは映画制作にはない苦労と言えるだろう。
「だから金城さんの案で実際に作ってみるじゃないですか。それで当人にプレイしてもらうと“やっぱおもしろくないなぁ、稲船さん、全部変えていい?”って言われたことがあって、一同“えーっ、全部ゥ!?”って(爆笑)。
とにかく“もっとこうした方がおもしろい”とか、“もっと攻撃早いほうがいいね”とかゲームがよくなることにはすごく熱心に意見してくれるんです。本当に好きなんですね。それと、金城さんにテストプレイをお願いするでしょ、メチャクチャうまいですよ」
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これまでゲーム中に実写
映像を使って俳優を起用したものは多数あるが、本作のように実際の俳優をCGで描いて、それを動かせるというのは初めての試みだろう。
本作の主人公、金城武と瓜二つの“明智左馬介”はどのようにして生まれたのだろう。
「主人公キャラにはフェイシャルキャプチャーという技術を使ってまして、金城さんの顔中に40コもセンサーをつけて、顔の動きをデータ化してます。だから金城さんの顔の演技と同じ表情でCGキャラが動きますよ。これはムービーシーン(ゲーム中に演出として挿入される、操作できない高品位
映像部分)で使われています」
なんと、CGキャラがここまで似ていたのは、そんな最新技術が使われていたのか!
「でも制作当初は似なくてねぇ(笑)。ただ、先日の東京ゲームショウ(発売前のゲームを一般
の人が試遊できるイベント)に金城ファンの女性が何人かきていて、感想を聞いたら“そっくりです、絶対買います”と言ってたからもう大丈夫かと(笑)」
ゲームに注目してイベントにまで足を運ぶとは、金城ファンはなんと熱狂的なことだろう!
「僕が質問責めに合いましたよ。“完成披露パーティはあるんですか?”とか、撮影禁止だというのにゲームの写
真撮りまくるしでスゴかった。僕がステージで雑誌社向けにデモプレイをするじゃないですか。で、敵を斬ってる時はいいんですけど、やっぱりやられちゃう時もありますよね。そのたびに会場から“キャーッ”とか“危ないー!”とか、落ち着いてでけへんやんか!って(爆笑)」
「CMなんかでも、単に自分をカッコよくみせるだけのものはやりたくないみたいで、よく演出的な部分にも口を出すそうです。演出というものに興味があるんでしょうね。ゲームもイチから作りたいと言ってましたし。
カプコンに入りたいとまで言ってましたから(笑)。
本社に金城さんが来るとやっぱりザワザワするじゃないですか。“うわ~金城だ~”って。それと同じくらいに金城さんは“うわ~、ゲーム作ってる~”ってものすごく喜んでて(笑)。マネージャーが“こんな楽しそうな武、初めて”って言ってたくらいでした。
おもしろいものを作りたい、という欲求に金城武はものすごく貪欲なようだ。
ここでカプコンの広報担当者より、彼が制作会議を行ってる様子を収めたVTRを見せていただいた。陳腐な表現だが文字通
り、眼をキラキラ輝かせてアイディア作りに取り組む彼の姿があった。
「彼は映画もテレビもゲームも、おもしろい物をすべて均等に考えていますね。これはとても大切な事で、ゲームもいいけど映画には劣る、とか考えていると僕らも話がしづらいですよ。
でも彼はそうじゃなくて、自分がゲーム制作には素人であるのを踏まえた上で、キチンと話を聞いて非常に前向きにアイディアを出してくれるんです。こういうケース(著名人の起用)では珍しいことではないかと思っています」
ゲームを作りたいなら会社を作ってはという稲船氏の提案に対し、金城武は「僕は社長ではなく現場がやりたい」と語っていたという。「鬼武者」はそんな彼の“おもしろいもの”への情熱が結実した作品と言えるだろう。
最後に、稲船氏に「鬼武者」見どころを語っていただいた。
「それはもう、主演・左馬介を自分で動かせるということでしょう。指先から伝わってくるような感覚を味わえます。世界観としては黒澤明を目指してますから、金城ファンはもちろん、映画ファン、ゲームファンも存分に楽しめます」
「実はこのゲームには女性用のサービスカットがあります。最後までいくと、左馬介のコスチュームが変化します。そのお楽しみが見たくば最後までやりましょう。これ本当です」(笑)
機 種 :プレイステーション2専用ソフト
タイトル:鬼武者
発売日 :‘01年1月25日発売予定
株式会社カプコン
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