“美しい獣たちのミッションが始まる!”がこの映画のキャッチ・コピー。確かに、ブラッド・ピットの美しさは誰もが認めるところだ。だが、寝起きの顔で登場のロバート・レッドフォードは美しいとは言い難い。深いシワが入りまくりの顔に、たるんだ皮膚。くたびれたジジイって感じか……。仕方がない。1937年生まれの彼は、もう64歳だ。日本でいえば、赤いチャンチャンコを着る還暦をとっくに過ぎたジイ様俳優である。
しかし、人に歴史あり! レッドフォードがトップ・スターの仲間入りをした『明日に向かって撃て!』('69)、『スティング』('73)の2作で、当時すでにオヤジくさかったポール・ニューマン相手に年下の彼が演じた役どころは、まさに本作のブラピのよう。恋愛に目がくらみ、お仕事は二の次になる若者だった。そして、バーブラ・ストライサンドとの共演作『追憶』('73)では、まばゆいばかりの美男子ぶりを披露。『華麗なるギャッツビー』('74)ではトラッドファッションでキメまくり! 甘いマスクで世の女性たちを魅了する正統派二枚目俳優として、一世を風靡した時代があった。その頃の彼をあえて今のスターに例えるならば、いつもヒーロー役のトム・クルーズのようだったと言えるかもしれない。
だが、40歳を過ぎた頃からレッドフォードは俳優としてだけでは飽き足らなくなったのか、監督業に進出。第1作目『普通
の人々』('80)でアカデミー賞監督賞をゲットし、以後、『クイズ・ショウ』('94)『モンタナの風に抱かれて』('98)、そしてマット・デイモンとシャリーズ・セロン主演の『バガー・ヴァンスの伝説』('00)など、今では良質な作品を撮る監督として確固たる地位
を築いている。
また一方では、新人映画作家を育成するためのサンダンス・インスティテュートを設立。ここが母体のサンダンス映画祭は、今やハリウッドのカリスマ監督となった『トラフィック』のスティーブン・ソダーバーグなど、多くの才能を世に送り出している。ブラピが現在の地位
にあるのだって、レッドフォードの監督作『リバー・ランズ・スルー・イット』('92)でピュアな魅力を発掘されたおかげだと言えるだろう。
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