第83回アカデミー賞 賞レース予想
私的映画宣言
今年の注目は、最多12部門ノミネートのイギリス映画『英国王のスピーチ』と、各映画賞で作品賞・監督賞など制覇しまくりの『ソーシャル・ネットワーク』。演技部門では、公私共におめでた続きのナタリー・ポートマン。毎年パーフェクト回答者が出る私的映画宣言ライターに、今年も主要6部門の賞レースを予想してもらいました!
『英国王のスピーチ』
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『ソーシャル・ネットワーク』を推す声はいまだ多いが、断然『英国王のスピーチ』が来る! と見ている。確かに『ソーシャル・ネットワーク』はよくできているが、しょせんいけ好かないエリートたちの権利争いで共感できず。コンプレックス克服に挑む国王の方が万人ウケするので、保守的なアカデミー会員の評を集めやすいからだ。個人賞も、功績あるのにいまだオスカー受賞歴ナシという人に行きがち。そう文字にすると面白味がないが、妊婦ナタポーが大きなおなかを抱えてオスカー像を受け取り、『ブラック・スワン』で出会った彼と熱い抱擁という、絵に描いたような感動シーンがあれば今年はOK! ってことで。
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アネット・ベニング
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賞レースの前半は圧勝だった『ソーシャル・ネットワーク』に『英国王のスピーチ』が追いつく勢いだけど、Facebook創設話を現代の寓話(ぐうわ)に作り上げたデヴィッド・フィンチャー監督の筆致にしびれたので彼に1票。脚色賞もアーロン・ソーキンにあげたいし、プロデューサーのスコット・ルーディンも『トゥルー・グリット』よりこっちを推しているという情報だよ。主演女優はナタポーで決まりだろうけど、男前なレズビアンをナチュラルに演じたアネット・ベニングの上手さを評価します。これみよがしじゃない演技っていいよね。助演は『ザ・ファイター』のベイルとメリッサで決定だけど、14歳のヘイリーちゃんにグランパ的な愛情で投票する高齢者が続いたら、大穴ですな。個人的にお気に入りの『インセプション』は技術面で1つくらいは受賞するかな?
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『トゥルー・グリット』
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監督賞に『インセプション』のクリストファー・ノーランがノミネートされていない時点で、オレ的に興ざめの第83回アカデミー賞。作品が良ければ監督もというセオリーと、会員たちの趣味を考慮して、『トゥルー・グリット』とジョエル&イーサン・コーエンが、作品賞&監督賞。主演部門は、コリン・ファースが捨てがたいが、『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグにあげて、『ブラック・スワン』のナタリー・ポートマンも受賞すると、去年のバラけ具合に似た結果でいいのでは。助演部門は、去年逃しちゃった『ザ・タウン』のジェレミー・レナーが悲願のゲット。そろそろが得意な会員たちは『ザ・ファイター』のエイミー・アダムスにも投じると予測。
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クリスチャン・ベイル
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『ソーシャル・ネットワーク』の年になるだろうと、個人的願望も込めて予想していたのだが、前哨戦を見る限り最多ノミネートの『英国王のスピーチ』が有利という結論に落ち着いた。ということで、作品・監督・主演男優の主要3部門を『英国王のスピーチ』が受賞するのでは!? 主演女優賞は怪作『ブラック・スワン』で一世一代のパフォーマンスを披露した、ご懐妊中のナタリー・ポートマン。助演男優賞は、コリン・ファースに見劣りせぬ演技が印象的だったジェフリー・ラッシュも可能性はあるが、以前、主演男優賞を受賞しているし、圧巻の演技を披露したクリスチャン・ベイルが受賞するでしょう。助演女優賞は、一昨年、主演女優賞にノミネートされていたメリッサ・レオで!
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デヴィッド・フィンチャー監督
『ソーシャル・ネットワーク』
今年も私的思い入れを排除した「当てにいく」予想。前哨戦をリードした『ソーシャル・ネットワーク』と、追い上げ急な『英国王のスピーチ』のどちらを選ぶかが今年のポイント。ここはアカデミー会員を兼任する業界人の賞で優位に立った後者に利があるとみた。ただし、例年作品賞と一致する傾向が強い監督賞は、今回はデヴィッド・フィンチャーか。英国人監督がこの賞を受賞するには前哨戦での圧倒的な勝利が必須条件。今年のような上位拮抗(きっこう)状態では、ハリウッドでは無名のフーパー監督には厳しいだろう。俳優部門はすべて本命サイドで面白みのない予想だが、うち3人の役が喫煙キャラというのがスモーカーにはうれしい。ヤンチャなクリスチャン・ベイルの吸う煙だけはアヤしげだが……。
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ナタリー・ポートマン
© 2010 Twentieth Century Fox.
猛チャージの『英国王のスピーチ』が優勢とは思いつつ、『ソーシャル・ネットワーク』と得票数は五分五分な気もするので、冷静な予想よりも個人的希望を重視。本当は監督賞で、デヴィッド・フィンチャーvs.クリストファー・ノーランという夢の対決を見たかったなぁ。演技部門ではジェシー・アイゼンバーグ、ヘイリー・スタインフェルドを強力プッシュしたいが、実績も加味のオスカーということでシビアに判断。おなかの子への愛も込めた、ナタリー・ポートマンの名スピーチに期待したい! 『英国王のスピーチ』の勢いは、激戦の助演女優賞あたりの逆転劇につながってほしい。クリスチャン・ベイル&ヘレナ・ボナム=カーターの助演賞コンビって、妙に怪しい香りが立ちのぼりそうでソソられませんか!? あと今年は、前例のないほど爽やかな司会コンビの奮闘も楽しみ~。
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『ソーシャル・ネットワーク』
去年は『ハート・ロッカー』に栄誉をもたらしたガイ・ピアースが今年は『英国王のスピーチ』に幸運を分け与えるか。助演女優賞ノミネートの『アニマル・キングダム(原題) / Animal Kingdom』にも出演している彼だが、本人は全然、賞に引っかかっておらず、ラッキーチャーム状態で何だか切ない。それはそうと、みんなは本当に『英国王のスピーチ』でいいのか。主人公のおおよそヒーローらしからぬ行動のせいなのか、どうも毛嫌いされているように思う『ソーシャル・ネットワーク』。だけど、これこそアメリカらしい話じゃないか。英国アカデミー賞じゃないんだから、ハリウッドはぜひ『ソーシャル・ネットワーク』でいこう! ってこんなところでわたしが呼びかけても意味ないけど。
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ヘレナ・ボナム=カーター
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本音としては作品賞には『英国王のスピーチ』を推したい。だが、Facebookの影響力からするとITが苦手なアカデミーの老会員たちも『ソーシャル・ネットワーク』を無視できないもんね。お話は、世の中をナメてる若者たちの仁義なき戦いだけど(雑に言うと)。監督賞もデヴィッド・フィンチャー、ついでに脚色賞もアーロン・ソーキン。しかし、『ザ・タウン』のベン・アフレックが無視されたのは残念。主演2人もガチ。でも、主演女優賞は受賞すると別離するというのがジンクス。ナタポー、大丈夫か。助演はクリスチャン・ベイルと、女優としてまっとうなキャラで本領発揮のヘレナ・ボナム=カーターに。ヘイリー・スタインフェルドが受賞したらサプライズだけど、まだ先でいいっしょ。しかし、司会者2人もそうだけど、地味といわれた昨年以上に地味だよな、今年。
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メリッサ・レオ
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予想と願望が最もかけ離れているのは主演女優賞部門。過去2度もヒラリー・スワンクに阻止されたアネット・ベニングに功労賞の意味も込めて今年こそ取ってほしい! が、ナタリーの勢いに負けてしまうか。私的主演男優賞はジェシー・アイゼンバーグで決まり。コリン・ファースは好演だけど『英国王のスピーチ』はジェフリー・ラッシュあってこその映画だと思う。『ザ・ファイター』は実話に基づくも技ありの映画でクリスチャン・ベイル、メリッサ・レオの健闘を祈る。特筆すべきは『トゥルー・グリッド』。コーエン兄弟の自由自在の映画作りの上手さには、ほとほと感心させられた。が、監督賞は今年こそフィンチャーで! 『127時間』の作品賞候補はダニー・ボイルを過大評価しているように思う。
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