『スター・ウォーズ』研究の第一人者 河原一久氏独占インタビュー
スター・ウォーズ特集
『スター・ウォーズ』シリーズの字幕監修を手掛け、同作を研究する第一人者としても著名な河原一久氏が、同作の裏話や最新作について独自の解釈を語った。
ダース・ベイダーのNO事件
Q:普段はどんなお仕事をされているんですか?
フジテレビ系列のワイドショー、「TIM:E3 タイム・スリー」「おはよう!ナイスデイ」「ビッグトゥデイ」「とくダネ!」のディレクターを経て、今はテレビ朝日の「ワイド!スクランブル」のチーフディレクターをしています。ワイドショーの映画ランキングの担当になって、映画会社の人たちと知り合いになったんです。そしたらこの男、何か映画に詳しいぞってことになって、映画会社の制作の人に紹介され、企画開発の手伝いをするようになったんです。
Q:映画業界の方とお知り合いだったことがきっかけで、本シリーズの字幕監修をされることになったのですか?
エピソード1のDVDが出たときに、字幕が劇場版とほとんど変わっていなかったんです。当時のFOXの担当者と話していたときに、変えたほうがいいよってことになって、エピソード2のときにちょっとお手伝いをしました。そしたら評判が良かったので、4、5、6のDVDBOXが出るタイミングで、特典映像もある、「イウォーク・アドベンチャー」もある、アニメも一斉に出るってことになって、全部担当することになったんです。もともと映画業界の人たちと個人的に仲が良かったのもあるし、普段番組制作をしていて、字幕を付けることにも日常的に慣れていましたからね。しかも『スター・ウォーズ』シリーズに詳しいので、ちょうど良かったんでしょうね。エピソード1に関しては、ブルーレイ版以前は関わっていないんです。ブルーレイ版はかなり字幕が違うんです。特に、エピソード1のパドメとパルパティーンの会話は陰謀劇の雰囲気を出すようにしています。
Q:ブルーレイが発売されたとき、ジョージ・ルーカスが数多くの修正を加えましたが、中でもエピソード6の中で、ダース・ベイダーに「NO!」と言わせたことが、ファンの間で物議を呼びました。その点について、字幕監修をされていてどう思いましたか?
スター・ウォーズには「NO!」が象徴的に使われています。パドメが死んで「NO!」。おまえの父親だ「NO!」だし(笑)。ベイダーにはまだ善の心が残っているってルークはいうけど、ヨーダもオビ=ワンもNOだと言う。でもルークは信じている。エピソード6でルークが皇帝と戦っているときに、ジェダイの象徴であるライトセーバーをルークは自分から捨てるんです。で、「僕はおまえのものにはならないぞ!」っていうわけですよ。そうやって、殺されそうになっている息子を見たベイダーが、ここで「NO!」と言って皇帝を倒すわけです。ブルーレイ版が発売されたときに、あのシーンでベイダーに「NO!」と言わせたのは、きわめて正しいんです。あそこは「NO!」と言わなきゃダメなところなんです。
Q:ベイダーが「NO!」と叫ぶという変更に、批判的なファンも多かったですが。
パドメが死んだときに「NO!」、母親が死んだときも「NO!」と思った。それは救えなかったことに対する「NO!」でした。ルークが死んだら、自分の家族が3度も死ぬことになる。ルークのときの「NO!」で、初めて自分の大切な人を救うことができる。だからこそ、なくてはならない「NO!」なんです。ルーカスは非常にわかりやすく変えたんです。あの「NO!」は非常に素晴らしかったんです。