タランティーノが人生を変えた7人のラッキー・スター(2/3)
今週のクローズアップ
ティム・ロス『レザボア・ドッグス』(1991)ほか
ハーヴェイ・カイテル、マイケル・マドセン、スティーヴ・ブシェミら個性派が、宝石強盗を企む男たちを演じたバイオレンス『レザボア・ドッグス』(1991)において、最もおいしい役どころを演じてブレイクしたイギリス人俳優ティム・ロス。『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』(1995)ではアカデミー賞助演男優賞候補となり、イタリアの巨匠ジュゼッペ・トルナトーレの『海の上のピアニスト』(1998)などの名作からティム・バートン監督作『PLANET OF THE APES 猿の惑星』(2001)といったハリウッド大作まで、幅広い作品でめきめき頭角を現した。
タランティーノとは、恋人と組んでちんけな強盗を企むチャラ男にふんした『パルプ・フィクション』、クネクネとした体つきが印象的なホテルのボーイを演じた『フォー・ルームス』(1995)など『レザボア~』以降も度々組んでおり、最新作『ヘイトフル・エイト』にも出演。「絞首刑執行人」を名乗る冷静沈着な英国紳士にふんし、カート・ラッセルやサミュエル・L・ジャクソンらアクの強い面々に劣らぬ存在感を発揮している。
ロバート・フォスター『ジャッキー・ブラウン』(1997)
『スタントマン殺人事件』(1977)、『SFクローン人間の復讐』(1979)、『アリゲーター』(1980)といったB級映画で活躍し、出演作は少なくないもののヒット作に恵まれなかったロバート・フォスターに白羽の矢を立てたのがタランティーノ。ロバートをリスペクトしていたタランティーノは『ジャッキー・ブラウン』でパム・グリア演じる運び屋の客室乗務員に恋する保釈屋役に彼を起用し、第70回アカデミー賞で助演男優賞ノミネートの栄光をもたらした。普段は交わることのないであろう男女が出会い、理屈を超えて惹かれ合っていく“大人のプラトニックラブ”は、いぶし銀のロバートだからこそ画になるというもの。本作に出演後、デヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』(2001)、第84回アカデミー賞作品賞にノミネートされた『ファミリー・ツリー』(2011)などの名作、話題作に出演しているほか、「HEROES/ヒーローズ(シーズン3)」(2008~2009)、「ブレイキング・バッド(シーズン5)」(2012~2013)などテレビドラマでもちょこちょこ活躍。ちなみに、ヒロインを演じたパム・グリアは『コフィー』(1973)、『フォクシー・ブラウン』(1974・日本未公開)など1970年代に流行ったブラックスプロイテーション映画(※郊外のアフリカ系アメリカ人をターゲットに作られた娯楽映画)で活躍し、タランティーノが10代からあこがれていた女優で、彼女を起用するために原作の設定を白人から黒人に変更して脚本を執筆したという。
デヴィッド・キャラダイン『キル・ビル』(2003)&『キル・ビル Vol.2』(2004)
父は『怒りの葡萄』(1940)、『リバティ・バランスを射った男』(1962)などジョン・フォード監督作品で知られるジョン・キャラダイン。異母兄弟のキース、ロバートも俳優という芸能一家に生まれたデヴィッド・キャラダインは、父と共演したマーティン・スコセッシ監督の『明日に処刑を…』(1972)、テレビシリーズ「燃えよ!カンフー」(1972~1975)で注目を浴びて以来、中国武術の技を磨きアクション映画を中心に活躍。出演した作品数は多いものの、映画賞とは縁遠かったデヴィッドに光をもたらしたのがタランティーノと組んだ『キル・ビル』、『キル・ビル Vol.2』。ユマ・サーマン演じるヒロイン、ブライドが復讐を誓った暗殺者集団の親玉で、タイトルロールでもあるビルにふんした。ビルは、自分の元を離れたかつての恋人ブライドの結婚式に刺客を送り、その場にいた人々を皆殺しにする恐ろしい男。オーレン・イシイ(ルーシー・リュー)、エル・ドライバー(ダリル・ハンナ)、バド(マイケル・マドセン)らすご腕の暗殺者たちが仕えたボスとしての貫禄はもちろん、クライマックスではなぜブライドがそんな恐ろしい男に惹かれたのか、納得させるような大人の男としての色香、余裕を感じさせる円熟した名演を見せ、『~Vol.2』で第62回ゴールデン・グローブ賞助演男優賞にノミネートされた。ちなみに父と同様、4度以上結婚しており恋多き人生だった模様。2009年に72歳で死去。