『砂上の法廷』キアヌ・リーヴス 単独インタビュー
完全復活とささやかれた『ジョン・ウィック』をはじめ、近年アクション映画への出演が続いていたキアヌ・リーヴスが、本作では落ち着いた中にも静かな闘志を燃やし、不利な裁判に挑む敏腕弁護士リチャード・ラムゼイを熱演。嘘にまみれた法廷を緊迫感たっぷりに描いた法廷ミステリーで、かねてからのファンだったという女優レニー・ゼルウィガー(『シカゴ』)との初共演を果たしたキアヌは、彼女の魅力を照れくさそうに(?)語りつつ、自身の役どころなどについて説明した。
■スーツ姿にブリーフケースで裁判所に行くのが好き!
Q:この映画に出演しようと思ったきっかけは?
まず、この映画の脚本を受け取り、コートニー・ハントが監督だと言われたんだ。2008年に監督の『フローズン・リバー』を観て、素晴らしいと思った。だからコートニーに会うのを楽しみにしていた。そして脚本について語り合った。僕は彼女の大ファンだし、彼女も僕が弁護士のラムゼイを演じることに同意した。僕は脚本とキャラクターに魅力を感じたんだ。洗練された語り口、サスペンスの要素。真実と正義、そして愛情ゆえの犯罪と記憶を探っていくところが面白かった。映画も、脚本も、プロジェクトも素晴らしくて、出演するのが楽しみだったよ。
Q:脚本を初めて読んでどう感じましたか?
脚本に惹きつけられ、驚かされた。原題は“完全な真実”だけど、誰もが嘘をついている。異なる種類の嘘だ。記憶に付随した嘘かもしれない。その中心に愛情がある。そして殺人も。それが純粋さと罪悪感と巧みな操作につながった。とても賢く、ユーモアがあり、大人の脚本だと思ったよ。とても洗練されているし。このキャラクターを演じられて嬉しかった。
Q:監督は法律を学び、資格も持っています。ラムゼイを演じるために、監督と話を重ねたそうですね。
コートニーは脚本を発展させるのが上手かったし、僕たちは一緒にリサーチしたんだ。映画はルイジアナ州ニューオリンズが舞台になっていて、コートニーと一緒に初期段階の数週間、そこを訪れ、弁護士に会い、法廷にも行った。彼女は、弁護士としてのラムゼイを僕なりに演じる自由を与えてくれた。弁護士たちを見ながら、僕は彼ら全員がキャラクターを演じているように感じたよ。彼らはどんなキャラクターを法廷で演じているのか? 僕はどんなタイプの弁護士なのか? って考えた。それに彼女は、僕が自分で冒頭陳述や最終弁論に取り組めるようにしてくれた。彼女と一緒に取り組んだ役作りはとてもわくわくするものだった。彼女は法律を勉強していたからね。彼女にとって、正しく描くことが重要だったんだ。
Q:『ディアボロス/悪魔の扉』でも弁護士を演じていましたね。監督は「弁護士として最もリアルに感じられた」ことがあなたを起用した決め手と言っていますが、そう言わしめたのはご自分のどういうところだと思いますか?
わかんないけど……勤勉なところかな(笑)。役作りのためにたくさんリサーチしたし、裁判所に行ってみたり、『ディアボロス/悪魔の扉』をやったときにもたくさんの弁護士に会った。映像もたくさん見たし。冒頭陳述や最終弁論、反対尋問の仕方とかね。彼女がそう思ってくれたというのはとてもうれしいよ。わかんないけど、僕はスーツを着て、ブリーフケースを持って、裁判所に行くというのが好きなんだよ。
■レニーとの初共演、ハグがぎこちなかったのは演出!
Q:レニー・ゼルウィガーとの共演はどうでしたか。
初めてスクリーンで見た時から、レニー・ゼルウィガーのファンだった。彼女は映画スターだ。だから彼女と会って共演するのを楽しみにしていたんだ。人物としてはスイート、とても素敵で優しくて、かわいいところがある人だね。演技に関してはすごく技術があって、そこにもたらされるべき瞬間というのを表現しているんだけど、演技をしていると感じさせないんだ。彼女も僕と同じで古風なところがある。気合いを入れて仕事に向かう。このシーンの真実とは何かって。しかも遊び心も忘れない。共演できて光栄だし、信頼できる素晴らしい人だよ。
Q:レニーが演じたキャラクター、ロレッタ(被害者の妻であり、容疑者青年の母親)には『チャイナタウン』のフェイ・ダナウェイのようなファム・ファタールのイメージを持たせたかったと監督は語っていました。レニーはそれを見事に体現していたと思います。ロレッタのような謎めいた女性は魅力的ですか?
女性はみんな謎めいてない?(笑) 実に魅力的だと思いますよ。あの謎めいた感じはレニーにとても合っていたね。とても素晴らしいパフォーマンスだった。強さと脆さ、それに神秘や母親としての度胸を共存させていて。か弱そうでありながら、有能でもあるように見えるという、女性の異なる面を出している。彼女の演技はずば抜けていたね。
Q:ラムゼイとロレッタが親密になるシーンであなたがぎこちなくなってしまって、監督がハグの仕方を教えたそうですね。どうしてぎこちなくなってしまったんですか?(笑)
それはコートニーが、監督なりの解釈を僕に教えようとしたんだよ(笑)。監督がそういう演出をしてきたんだ。
Q:ということは、あなた自身はぎこちなくなかったんですね?
うん。それはとても興味深いシーンなんだ。ラムゼイはロレッタを慰めに来たのか? ラムゼイはただ操られていただけなのか? みたいな多くの疑問が沸き起こる瞬間のハグなんだ。僕は監督がそうして欲しいと望んだからぎこちなくしたんだ。