『砂上の法廷』キアヌ・リーヴス 単独インタビュー(2/2)
■嘘が前提の演技にわくわく
Q:「証言台ではみんな嘘をつく」というラムゼイのセリフが象徴するように、キャラクターたちによるポーカーゲームのような心理戦が本作の見どころだと思います。そういった点において演じるのに苦労しましたか?
とても光栄だった。それは本当にたのしかったよ。心の中では何かを思っていて、そしてそのうえで実際にはどういう振る舞いをしたのか。「証言台ではみんな嘘をつく」と弁護士のラムゼイが言うわけだけど、そのセリフは(嘘をついているのが前提で)みんなが何について嘘をついているのかということまでを示唆している。仕事か、お金か。でも基本的には欲望だ(笑)。みんな自分自身を守るためにね。だからさみしくもあるね。
Q:ラムゼイはかなり複雑なキャラクターだったと思いますが、彼をどう思いますか。
ラムゼイを表現する単語として、最初に思い浮かんだのは「driven(衝動的)」。それに彼はとてもうまく物事をこなすし、ユーモアのセンスもある。彼は愛のために行動するだろ? 彼はとても保護的で、自分のクライアントをかばうんだ。クライアントとの関係を守ろうとするし。彼はとても自発的な人で、でもひねくれた人間ではない。むしろ理想主義的で、でもナイーブではないね。
Q:この作品は2014年に撮影されたとのことで、当時はほかの作品も並行して撮影されていたかと思いますが、役ごとに切り替えるのは得意なほうですか?
どちらでもあるね。役を切り替えるのに苦戦したこともあったよ。こればかりは本当に役ごとの要望によりけりだと思う。『ハートブルー』のジョニー・ユタ、『マイ・プライベート・アイダホ』のスコット・フェイヴァー、『ビルとテッドの地獄旅行』のセオドア“テッド”・ローガンを同時期に演じていた頃は、気が狂いそうだったよ。でもその頃に比べたら、どうやってこなしていけるかを学んだと思うよ。仕事するのが好きだし。役者の仕事ができてとても幸せだと思っている。ある役から別の役に切り替えるのに、たまに混乱させられることもあるけどね。
Q:アクション映画のときも含め、決まった役作りの方法はありますか?
決まったプロセスはあるね。僕の基本的なアプローチは、まず脚本から。そして僕が演じるキャラクターについて考える。そのキャラクターがどのように物語と調和していくのかを把握する。「僕が演じているこのキャラクターは一体何者なんだ?」って考える。そいつがどう感じるか、何を望んでいるのか、何をしているのかを想像するんだ。それが僕の任務だからね。それから、監督のビジョンと一致させていく。アクション、ドラマ、コメディー、ミクスチャー、SFであろうともね。監督の望むストーリーとキャラクターにフィットするようなビジョンを探すんだ。今回も同様だ。そして役を体現する。衣装を着て、リハーサルをして、演技する。そしてかなり想像するね。何度も心に思い描いてみるんだ。仕事をしていないとき、ソファーに座って、役について思い浮かべる。どんなシーンになるんだろうかとか、何をしたら楽しくなるだろうかとか。リサーチなどでしっかりした土台を作ったうえで、想像力を使うんだ。
Q:では、今後挑戦したいことは?
わかんないなー! 最近、素晴らしいニコラス・ウィンディング・レフン監督(『ドライヴ』)と一緒に仕事できたばかりだし。彼の新作『ザ・ネオン・デーモン(原題) / The Neon Demon』でね。たくさんの人がその作品を観てくれるのを楽しみにしてる。『ジョン・ウィック:チャプター・ツー(原題) / John Wick: Chapter Two』の撮影もほぼ終わっているね。とても素晴らしい経験になったよ。コメディーもしたいし、何でもやってみたいね。次に来るものを何でも受け入れるよ。でもそれが何なのかはわかっていない。
取材後記
自らもハリウッドのトップスターでありながら、レニーとの共演に喜びを隠せない様子のキアヌ。話を聞いているだけでも、本作の撮影がいかに充実していたかがうかがえた。また、キアヌに日本での人気ぶりを報告すると、「ありがとうございます。技術的に、文化的に、個人的にも日本から影響を受けています。日本とのつながりは素晴らしいものだと思っています」とうれしそうに日本のファンへ感謝を伝えた。世界に先駆けて日本でいち早く公開を迎える本作、ファンなら見逃せない一作となりそうだ。
取材・文:石神恵美子
映画『砂上の法廷』は3月25日よりTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開