『シビル・ウォー』公開間近!「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」徹底解剖!
今週のクローズアップ
マーベルコミックスの人気キャラクターであるキャプテン・アメリカとアイアンマンの対立、そしてアベンジャーズの分裂を描く『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』が4月29日に全国公開されます。いまや映画界を席巻する「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」ですが、「そもそもMCUって?」と思いつつも、いまさら聞けないという人に、MCUがなぜヒットしたのか、そして今後の展望までをお教えします!(編集部・石神恵美子)
まずは基本編!
1.「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」って何?
MCUとは、マーベルコミックスを原作にマーベル・スタジオが製作するスーパーヒーロー映画・テレビシリーズが共有する架空の世界。アメコミ(アメリカン・コミックス)では、同一の世界観を共有し、キャラクターやストーリーがクロスオーバーするのはよくあることですが、それを映画でやってしまおうというのがMCUの発想。
2. ちなみにマーベルコミックスって?
マーベルコミックスとは、「スパイダーマン」「X-メン」「ファンタスティック・フォー」「ハルク」「アイアンマン」などといった人気アメコミを生み出してきた出版社。「スーパーマン」や「バットマン」を抱えるDCコミックスと並ぶ二大アメコミ出版社の一つとして知られています。1997年に倒産した後、「マーベル・エンターテインメント」として再出発するも悪戦苦闘。2009年にウォルト・ディズニー・カンパニーの傘下に入ります。
3. 今まで公開されたMCU映画作品は?
【フェーズ1】
1.『アイアンマン』(2008)
2.『インクレディブル・ハルク』(2008)
3.『アイアンマン2』(2010)
4.『マイティ・ソー』(2011)
5.『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)
6.『アベンジャーズ』(2012)
【フェーズ2】
7.『アイアンマン3』(2013)
8.『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013)
9.『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)
10.『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)
11.『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)
12.『アントマン』(2015)
これまでに公開されたMCUの映画作品は12本!「どの順番で観ればいいの?」と悩まれる方は、まず公開順に観ることをおすすめします。ちなみに時間軸の順番でいくと1940年代が舞台の『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』が最初。
ちなみにテレビシリーズも続々と誕生しています。
「エージェント・オブ・シールド」
「エージェント・カーター」
「Marvel デアデビル」
「Marvel ジェシカ・ジョーンズ」などなど
4. どうしてマーベルコミックス原作の映画である『X-MEN』シリーズや『スパイダーマン』シリーズはMCUに含まれていないの?
実はマーベルが業績不振だった時期に、一部コミックスを映画化する権利を20世紀フォックスやソニー・ピクチャーズ エンタテインメントに譲っており、『X-MEN』シリーズや『スパイダーマン』シリーズは、マーベル・スタジオが手掛けているわけではないので、MCUとは世界観を共有していないのです。
図式化すると……
20世紀フォックス
『X-MEN』シリーズ、『ファンタスティック・フォー』、『デッドプール』など
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
『スパイダーマン』シリーズ、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズなど
(ちなみにDC作品を手掛けているのはワーナー・ブラザース)
こうなると、いろいろな不都合も生じるわけです……例えば、原作のコミックでは、「X-MEN」シリーズでおなじみのマグニートーの子であるクイックシルバーというキャラクターは『X-MEN:フューチャー&パスト』にも『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』にも登場しますが、全く別の俳優が演じていますし、20世紀フォックスが「X-MEN」シリーズの映画化権利を持っているので、マーベル・スタジオは原作の設定を用いることができない部分も多いのです。
しかし! 新作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では、製作・配給の垣根を越えて、新スパイダーマンが登場するという、まさにアメコミ映画史上、いや映画史上で語り継がれるであろう、夢のような出来事が起こるわけです。
ここで、マーベルファンのあなたはすでにお気づきに違いありません。スパイダーマンより早く、スタジオの垣根を越えて、マーベルコミックス原作の映像作品に頻出している、ある意味“ヒーロー”のような人物がいることを……!
それこそが、マーベルコミックスで「スパイダーマン」や「X-MEN」などを生み出したアメコミ界の巨匠、スタン・リーです。20世紀フォックスの『デアデビル』や『X-MEN』シリーズにも、ソニーの『スパイダーマン』や『アメイジング・スパイダーマン』にも、そしてもちろんMCUの作品にも幾度となくカメオ出演しています。
MCUが成功したワケ編
1. 王道のあえて逆をいく大胆さ!
MCUが成功した最大の理由はその大胆な構成と言えるでしょう。フェーズ(段階)という区切りを設けていることからもわかるように、全体の見通しを立てて映画化しています。アイアンマン、ハルク、ソー、キャプテン・アメリカとそれぞれのキャラクター単体映画でスタートし、全員主役級のキャラクターがヒーローチーム「アベンジャーズ」として一堂に会することに。まさに夢の競演となるわけです。20世紀フォックスが『X-MEN』シリーズを手掛け、後に『ウルヴァリン』シリーズをスピンオフ作品として始めたように、最近ではワーナー・ブラザースがDCコミックスの二大ヒーローを戦わせる『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』を皮切りに一大プロジェクトを始動させたように、普通ならスーパーヒーローが集合する映画からスタートさせがちなところを、マーベルはあえて逆をいったわけです。
2.パズルのような感覚……おまけ映像が面白い!
そして何よりもMCUの映画作品を面白くしているのはポストクレジットシーン。エンドロールが流れた後に映し出されるおまけのような映像のことです。これこそが次回作以降の布石になっていたりするわけで、ファンは「!!」と衝撃を受けたり、「こうなるのかな……」と作品を観た直後から、その後の展開についてあれこれ思いを巡らせてしまうわけです。例えば、『アイアンマン』のおまけ映像にはS.H.I.E.L.D.の長官ニック・フューリーが登場します。本編には出てこないので、「この人誰?」と思わずにはいられず、さらにはそれを演じているのがサミュエル・L・ジャクソンとなると明らかな大物感が漂い、わくわくせずにはいられない……。
そしておまけ映像に限らず、本編でも会話や小道具で世界観が一緒であることが確認できたり、何気ない会話だと思っていたものも、改めて観なおすと実は伏線になっていた……ということがあったり、観るたびに新しい発見があるのもMCUならでは。MCUという壮大な世界観に対して、1作ごとにパズルのピースをはめていくような感覚がクセになります。
3.変化球で新境地開拓!
ファンを飽きさせないような工夫もたくさん。ヒーロー単体映画をひとしきり公開すると、いきなり今度は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で、犯罪歴のあるメンバーによって構成された異色のヒーロー集団ものをぶつけてくるところもさすが。もちろん世界観はつながっていますが、単体ヒーローが登場して比較的すぐに「アベンジャーズ」入りするのと違って、彼らが急にアベンジャーズと結びつくような気配は感じられず、MCUの中でアベンジャーズとは違う可能性を押し広げてくれそうな期待感が高まります。(アベンジャーズはエリートの集まりですし……)
そしてこれだけヒーローものが続くと、ヒーロー単体映画にもなにか変化がほしい……。そんなときに公開されたのが、体長1.5センチになれる特殊スーツを着用し、娘のためだけに戦う『アントマン』。アントマンの設定自体がほかのヒーローと違い、かなり親近感の沸くものになっていると同時に、作風をファミリーコメディーに振り切っているのが功を奏します。
結局のところ、マーベル・スタジオは原作がマーベルコミックスの限り何を作っても、ヒーロー映画。これを逆手にとって、ヒーロー映画が好きでない人も楽しめる“ヒーローものコメディー”を作り上げてきたあたりにマーベル・スタジオの並々ならぬ決意を感じ取れます。実際、アベンジャーズに興味のなかった人たちが『アントマン』をきっかけにMCUにはまったという声も耳にしますし、“ヒーローものホラー”“ヒーローものミステリー”なんていうのもいつか製作してほしいなーと期待をあおります。
4.キャスティングが巧妙!マーベル流ギャンブルの極意
アイアンマンことトニー・スタークとして一躍ハリウッドのトップスターとなったロバート・ダウニー・Jrをはじめ、マーベルヒーローを務め、その名を知られるようになった俳優は数知れず。それも安全策を取らず、攻めの姿勢で好成績を残しているのがMCU。例えば、ヒットが必要不可欠だった第1作『アイアンマン』で、トム・クルーズがアイアンマン役に興味を示していたことは知られていますが、すでに地位を確立したトムではなく、麻薬の不法所持などで幾度となく逮捕され、刑務所へ1年間入所していた過去があり、当時あまりイメージが良いとは言えなかったロバートを抜てき。同作のジョン・ファヴロー監督は「ロバートの人生自体がトニー・スタークそのものだ」と感じたことがその決め手だったと USA TODAY のインタビューで語っています。まさしくファヴロー監督の言葉を証明するかのように、ロバートはアイアンマン役で完全復活し、『アイアンマン』はヒットを記録。
5.悪役が魅力的!ロキ様万歳
『スター・ウォーズ』シリーズのダース・ベイダーや、『ダークナイト』シリーズのジョーカーのように、悪役が魅力的だと物語にも深みが出ます。MCUで言えば、『マイティ・ソー』シリーズの主人公である雷神・ソーの弟ロキはかなりの立役者。良き弟から一変、『アベンジャーズ』でアベンジャーズが結集する理由を作るまでの悪役に。俳優トム・ヒドルストンはハリウッドでほとんど無名に近かったものの、ロキ役で大ブレイク。ロキの人気ぶりはとどまることを知らず、ロキのスピンオフ作品を熱望するファンも多い……。
また、興行的にも批評的にも優れていた『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』は、なんといっても暗殺者ウィンター・ソルジャーの正体がキャプテン・アメリカにとって忘れることのできない人物だった……という点がその評判の良さにかなり貢献しているように思えます。そして、そんなウィンター・ソルジャーも登場する『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ではなんとアベンジャーズが分裂し、まさかのヒーロー同士がぶつかり合うという構図。そうやって、続々誕生するヒーロー映画での悪役不足を補っていくわけですね。どちらのチームを応援するかで、印象が変わる作品になりそう。
ちなみにそれぞれのチームのメンバー構成は……
キャプテン・アメリカチーム
キャプテン・アメリカ、ファルコン、スカーレット・ウィッチ、ウィンター・ソルジャー、ホークアイ、アントマン
アイアンマンチーム
アイアンマン、ブラック・ウィドウ、ウォーマシン、ヴィジョン、ブラックパンサー、スパイダーマン
6.“マーベル女子”台頭!
かつて、ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』のマーチャンダイジングの権利(商品化権利)を20世紀フォックスから認めてもらい、その関連グッズでかなり儲けたという逸話がありますが、MCUの関連グッズの豊富さは『スター・ウォーズ』を彷彿させます。そしてここは、お互いディズニー傘下ということもあって、男性だけをターゲットにするのではなく、ファミリーと女性もターゲットにしたマーケティングが巧みです。その成果ともいうべく、昨年に引き続きトレンドになっているのが“マーベル女子”。これはマーベルのロゴやキャラクターがデザインとなったファッションアイテムなどを身につけている女の子たちのことです。