衝撃の実話!空前の飛行機事故を完コピした『ハドソン川の奇跡』撮影の裏側
ニューヨークの市街を流れる川、そこに旅客機が不時着するというありえない状況に、世界中がニュース映像に釘付けになった。誰もが目にし、強烈な印象を受けた映像を数年後にまったく同じ状況に映像化するというチャレンジをしたのが、名優であり名監督のクリント・イーストウッド。繊細にして大胆なプランニングから実際の撮影まで、その裏側をイーストウッド監督の証言から明らかにする。(取材・文:下村麻美)
■実際に起きた未曽有のハドソン川飛行機不時着事故
事故の概要
(事故日時) 2009年1月15日、午後3時25分ニューヨークのラガーディア空港離陸
(事故機) エアバスA-320-214USエアウェイズ1549便乗客乗員155名
(事故の原因) 鳥の大群がエンジンに入り込み、すべてのエンジンが制御不能になる
(機長) 総飛行時間2万7,000時間チェスリー・サレンバーガー機長
(機長の事故対応) 空港へ戻るのは不可能と判断、ハドソン川に不時着する
※参考資料:『機長、究極の決断 「ハドソン川」の奇跡』発売中/C.サレンバー ガー著 静山社文庫刊 より
■完コピした事故現場!イーストウッド流映像アプローチ
フィクションであれば、多少のごまかしはきくかもしれないが人々の記憶にも新しく、なおかつニュース映像が残っている事故。飛行機の不時着シーンは誰もが本物と見間違うほどの映像のリアリティーをイーストウッド監督は求めた。イーストウッド監督のアプローチはこうだ。
1.本物のエアバス機購入
「型落ちの飛行機なのでとても安かった!」(イーストウッド監督談) フォールズレイク湖(ミネソタ州)の上に設置。飛行機を旋回させたり、エンジンをいろいろな角度に傾けたり、さまざまな飛行機のショットを撮影した。
2.実際の事故で救助にあたった救助船とクルーを映画で採用
ハドソン川で、そこに飛行機があると仮定し空間を作り当時使用された同じ救助船とクルーが飛行機に集結してくるかのように撮影。
3.実機とビジュアルエフェクトの綿密な計画
1で撮った飛行機を、2で撮ったハドソン川で集まってくる救助船の映像にビジュアルエフェクトによって一つの映像として完成させる。
「この映像を撮るために、ものすごくたくさんのことをプランニングしなければならなかった。それは重要なことだった。それがうまく行かなければこの映画はひどくチープなものになっていた」(イーストウッド監督談)