第67回ベルリン国際映画祭コンペティション部門18作品紹介
第67回ベルリン国際映画祭
2月9~19日(現地時間)に開催される第67回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門18作品を紹介(コンペティション外を除く)。今年の審査委員長は、映画『ロボコップ』や『氷の微笑』などを手掛けたポール・ヴァーホーヴェン監督。日本からはSABU監督が2度目のコンペティションへの出品を果たすほか、リチャード・ギア主演のミステリー、キリアン・マーフィ出演のブラックコメディー、韓国の鬼才ホン・サンス監督やフィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ監督の最新作など、今年も世界各国から集められた名作が金熊賞を競う。(文:岩永めぐみ/平野敦子/南樹里/編集部 浅野麗)
<金熊賞>『オン・ボディー・アンド・ソウル(英題) / On Body and Soul』
製作国:ハンガリー
監督:イルディゴ・エンエディ
キャスト:モルチャーニ・ゲーザ、アレクサンドラ・ボルベーイ
【ストーリー】 予想だにしない不思議なラブストーリーが、われわれが暮らす世界のどこかで毎日静かに始まっている。何年もの間、会ったこともない同じ男性の夢を見るマリアは、ある日、夢の中で会っていた男性と現実世界で出会う。
【ここに注目】 『私の20世紀』で第42回カンヌ国際映画祭カメラドールを受賞したハンガリーの俊英、イルディゴ・エンエディが監督と脚本を担当してつづる一風変わったラブストーリー。現実と夢の世界が交錯するような世界観を、女性監督ならではの繊細なタッチで映し出す。ここ数年『サウルの息子』『リザとキツネと恋する死者たち』などの個性派作品を次々と生み出しているハンガリー映画の底力を見せつけるか。
<審査員賞>『フェリシテ(原題) / Felicite』
製作国:フランス、セネガル、ベルギー、ドイツ、レバノン
監督:アラン・ゴミ
キャスト:ヴェロ・チェンダ・ベヤ、ガエタン・クラウディア
【ストーリー】 自由で誇り高い女性フェリシテはコンゴの首都キンシャサのバーで歌いながら、女手一人で息子を育てていた。ある日、息子が交通事故に遭い、手術をしなければ脚を失うため、費用をかき集めるべく彼女は奔走するが……。
【ここに注目】 前作『オウジュルデュイ(原題) / Aujourd'hui』から、5年振りのベルリン国際映画祭コンペティション部門への参加となるアラン・ゴミ監督。セネガル人とフランス人の両親のもと、フランスで育った彼の新作の舞台は、前作と同じくアフリカ。息子を救うためにキンシャサの街を駆けずり回る女性シンガーを描いており、アフリカン・ビートあふれる実験的な作品になりそうだ。
<最優秀監督賞>アキ・カウリスマキ監督『ジ・アザー・サイド・オブ・ホープ(英題) / The Other Side of Hope』
製作国:フィンランド、ドイツ
監督:アキ・カウリスマキ
キャスト:トンミ・コルペラ、カティ・オウティネン
【ストーリー】 ポーカー愛好者の男は、かつては各地を回りながらセールスマンをしていたが、今はレストランの経営者におさまっている。ある日、彼はヘルシンキにやって来たばかりのシリア難民の男性と知り合い、交流するようになる。
【ここに注目】 『過去のない男』『ル・アーヴルの靴みがき』などで知られるフィンランドの鬼才、アキ・カウリスマキ監督が描くヒューマンドラマ。ヘルシンキを舞台に、地元住民と難民が織りなす不思議な人間模様を、カウリスマキが得意とするオフビートな笑いを交えて描き出す。『ラヴィ・ド・ボエーム』『白い花びら』など本映画祭フォーラム部門常連の巨匠に勝利の女神は微笑むのか。
<最優秀女優賞>キム・ミニ『オン・ザ・ビーチ・アット・ナイト・アローン(英題) / On the Beach at Night Alone』
製作国:韓国
監督:ホン・サンス
キャスト:キム・ミニ、ソ・ヨンファ
【ストーリー】 既婚男性との関係についてじっくり考えようと、海辺の街に一人旅に来た女優が、そこで出会う人々との交流を通して自らを見つめる姿を追う。
【ここに注目】 世界三大映画祭には縁のあるホン監督。本映画祭でもデビュー作『豚が井戸に落ちた日』がフォーラム部門で上映されて以来、2007年にパノラマ部門へ『浜辺の女』が、コンペティション部門には2008年の『アバンチュールはパリで』、2013年の『ヘウォンの恋愛日記』に続く3度目の出品となる。今作では、主演の女優キム・ミニと不倫疑惑が報道されていることもあり、別の意味での注目度・話題性も高い。
<最優秀男優賞>ゲオルク・フリードリヒ『ブライト・ナイツ(英題) / Bright Nights』
製作国:ドイツ、ノルウェー
監督:トーマス・アルスラン
キャスト:ゲオルク・フリードリヒ、トリスタン・ゲーベル
【ストーリー】 土木技師のマイケル。父親が急逝したことを機に彼は、長年に渡り失われていた息子ルイスとの関係を修復させようと、ノルウェー北部へのドライブに誘うが……。
【ここに注目】 フォーラム部門、パノラマ部門への出品に加え、コンペティション部門には2013年の『ゴールド(英題)/ Gold』に続き2度目となるアルスラン監督。本作は、ニコレッテ・クレビッツ監督の『ワイルド わたしの中の獣』でオオカミと女優の共演を成功させたラインホルト・フォルシュナイダーが撮影監督を務めており、ノルウェーとベルリンで撮影している。
<芸術貢献賞(編集)>ダナ・ブネスク『アナ、モナムール(原題) / Ana, mon amour』
製作国:ルーマニア、ドイツ、フランス
監督:カリン・ペーター・ネッツァー
キャスト:ミルチャ・ポステルニク、ディアナ・カヴァリョティ
【ストーリー】 文学部の学生として出会ったトマとアナ。初デートで発作を起こしたアナに理解を示したトマだったが、次第にアナの発作は悪化。そんなある日、アナの妊娠が発覚。出産後のアナは好転し、編集者として認められ、トマが子どもの世話をするようになる。
【ここに注目】 長編3作目の『私の、息子』でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したカリン・ペーター・ネッツァーは、クリスティアン・ムンジウ監督などと共にルーマニア・ニューウェーブをリードする監督の一人。共依存に陥った男女の7年間を描いた本作では、時間が前後する演出により、主人公2人の各視点で物語が進行する。ミルチャ・ポステルニクとディアナ・カヴァリョティがメインの恋人を演じるほか、ルーマニアを代表する俳優ヴラド・イヴァノフも出演している。