「ウォーキング・デッド」ミショーンの魅力~日本刀を操る孤高の女戦士
ウォーキング・デッドの魅力
「ウォーキング・デッド」シーズン9の放送開始の前に、主な登場人物たちの魅力をもう一度、振り返っておこう。第5回目はいつも過激な女戦士ミショーン。彼女を演じる女優ダナイ・グリラが『ブラックパンサー』のオコエ役に抜擢されたのも、ミショーンがカッコイイからかも!?(平沢薫)
※ご注意※ なおこのコンテンツは「ウォーキング・デッド」シーズン8までをがっつり観た人向けですので、未見の場合は衝撃のネタバレが含まれることがあります! ご注意ください。
ウォーキング・デッドの魅力 連載第5回 ミショーン
ドレッドヘアに日本刀の過激な女戦士
ドレッドヘアに黒くしなやかな身体、日本刀を背負い、紐でつないだウォーカー2体を従えて歩く女戦士。そんな強烈なビジュアルで登場したのがミショーン。彼女は、基本的には変わらない。日本刀を駆使する優れた戦士なのはずっと同じ。考え方が現実的なのも同じ。しかし、彼女の生活の仕方は作品全体を通して、緩やかに変化していく。最初は他人を信じず単独行動をする一匹狼だったが、ごく少しずつ他人と協力して行動するようになっていく。そして、人々と共に暮らし、人を愛する力を取り戻していくのだ。
意思が強く、物怖じしない。集団にリーダーであるリックのやり方に対しても、疑問を持った時は、それを口に出すし、批判的な意見も言う。彼女は後にリックと恋愛関係になるが、それはリックが彼女のそういう率直さに惹かれたからではないだろうか。
かつては現代美術を楽しむ優雅な生活をしていた
彼女が激変したのは、ドラマに登場する前。もともとは、現代アート絵画を多数飾った高級アパートで、夫やその友人とアートの話をしながらワインを飲むような暮らしをしていて、3歳の息子もいた。ドラマではかつての生活が描かれ、以前の職業は具体的には語られないが、コミックでは元弁護士。なるほど弁護士なら、優雅な生活がお似合いだ。ドラマでも、日本刀使いはその頃からの彼女の趣味だった。そんな暮らしを送っていた彼女は、息子と夫を失ったことで激変し、孤独な女戦士になったのだ。
一匹狼の彼女が、人と生きるようになる
ミショーンは、リックたちの集団の一員だったアンドレアが森でウォーカーに襲われているところを救ったことから、やがて刑務所で暮らすリックたちに出会う。最初は無口で、誰も信用していないことを隠しもしなかった彼女だが、仲間と一緒に物資の調達に行き、互いに助け合うという経験を積み重ねて、少しずつ仲間たちと打ち解けていく。そして、一匹狼だった彼女が、これまでのやり方を変えて、集団としてやっていく方法を考えるようになる。それを象徴するのが、シーズン5、アレクサンドリアでのリックへの言葉だ。
リックは、この共同体の人々がウォーカーの恐ろしさを知らないので、自分たちが彼らを教え導かなくてはならない、自分たちが経験で得た“武力による生存術”に彼らを従わせなくてはならない、と考える。さらにリックは、この共同体が見て見ぬふりをすることで平和を維持していることに苛立ち、家庭内暴力を振るう男を批判し、彼と喧嘩になって銃を向ける。
が、ミショーンはそんなリックに銃を下させる。そして、リックにこう言うのだ。「ずっと外で生きていくことはできない」「銃は必要ない。私も刀は下ろした。別の方法は見つかる。一緒に見つけるのよ」。あの一匹狼ミショーンが、集団で生きていく方法を考えるようになるとは。この言葉は「ダメでも、あなたといる」と続き、ミショーンが、リックと一緒に生きていきたいという気持ちを伝える言葉にもなっていた。
さらに、カールの死が彼女を変える
そのようにして“集団で生きる”ということを考えるようになったミショーンに、もうひとつ、大きな出来事が起きる。それはカールの死だ。カールは見知らぬ人を助けたせいで死んでしまうが、彼が助けた人物はたまたま医学生だった。ミショーンは言う、「彼が人を助けたから、ここに医者がいる。カールは死んだけど、あきらめなかった。私たちは彼が望む人間になるの。あきらめない」。
そして、ニーガンとの最終戦で、リックが彼を殺さず、生かすことを選んだ時も、それを支持する。彼女がかつて、ガバナーに復讐として過剰な暴力を加えたことを思うと、なんという変化だろう。そして、シーズン9の予告編では、ドレッドヘアを束ねたヘアスタイルに変わっている。これからの彼女の行動は、少し変わっていくかもしれない。そんな気もしてくるのだ。
原作コミックでのミショーン
ウォーカー2人を連れた日本刀の名手として登場するのは同じ。コミックでは元弁護士で離婚していて、娘が2人いるが行方不明。大きな違いは恋愛相手。コミックでは多数のアフリカ系男性と交際し、タイリース、エゼキエルとも関係を持つ。モーガンと愛し合うようになるが、すぐに彼が死去。リックとは恋愛関係にならない。
また、原作では彼女がガバナーから受ける虐待が激しく、彼への復讐も過激。TV版では片目を潰すだけだが、コミックでは片目をくり抜き片腕を切断し、電気ドリルなどで彼を瀕死(ひんし)の状態にする。
【この人にも注目 モーガン・ジョーンズ】
ミショーン同様、東洋武術の達人だが、彼女と違ってどんどん変貌していくのがモーガン。最初は良き父親でリックを助ける善人だが、息子を失って引きこもりになる。その後、ある人物に導かれて棒術の達人になり、人を殺さない主義に。しかし、息子のように可愛がっていた少年を殺されて一転、大勢を殺しまくる。その後、ジーザスに諭されて、殺さない主義に戻る。シーズン8で旅に出るけど、また遭遇するかも!?
原作コミックでのモーガン・ジョーンズ
原作で描かれるのは、TV版の前半のみ。息子と暮らしている時にリックを助け、息子を失った後にリックと再会するのは同じ。原作では、アレクサンドリアでミショーンと出会い愛し合うようになるが、付き合い始めたばかりでウォーカーに襲われて死んでしまう。
次回はユージーン ・ポーター! お楽しみに!
【ウォーキング・デッドキャラの魅力解剖連載予定】
vol.0 「ウォーキング・デッド」シーズン9を前に魅力を再確認!
vol.2 ダリル・ディクソンの魅力~無口な一匹狼なのに優しい
vol.3 マギー・リーの魅力~愛することで強くなっていく愛の人
vol.5 ミショーンの魅力~日本刀を操る孤高の女戦士
vol.6 ユージーン ・ポーター
vol.7 キャロル・ ペルティエ
vol.8 リック・グリムス