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河瀬監督らが語る日仏映画合作協定はなぜ必要なのか(4/6)

映画で何ができるのか

助成金を頼りする資金調達

澤田正道
斎藤工主演&エリック・クー監督『家族のレシピ』のプロデューサーも務めているComme des Cinemasの澤田正道。

ジール:資金調達はどのような感じだったのでしょうか?

メルラン :筆頭プロデューサーはわたしですが、是枝さんは非常に友情に厚い方で、長年組んでいる会社があります。資金は『万引き家族』がカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞する前の時点で集まっていましたね。脚本が素晴らしく、キャスティングもトップクラスでしたので、通常のフランス映画の信頼のおける会社が自然とついてきましたし、CNCの助成金もありましたので、680万ユーロ(約8億5,000万円・1ユーロ125円計算)の調達に苦労はありませんでした。さらに撮影を、(『ポーラX』や『モーターサイクル・ダイアリーズ』の)エリック・ゴーティエというフランスで3本の指に入るカメラマンが手がけることになり、制作体制が整いました。

ジール:ということは、法的にはフランス映画なのですね。

メルラン:そうです。 95%はフランスがイニシアチブを持っています。

ジール:それでは、日本の稀有なプロデューサーを紹介しましょう。深田晃司監督『淵に立つ』(2016)や濱口竜介監督の『寝ても覚めても』(2018)をはじめ、手がけた作品の多くがカンヌ国際映画祭やベルリン国際映画祭に選出されている澤田さんです。

澤田正道(以下、澤田):わたしはたまに日本映画も手がけますが、フランスで人生の半分を過ごしています。映画の仕事をするようになったきっかけが、今村昌平監督が参加したフランスのプロジェクト『11'09"01/セプテンバー11』(2002)ですが、最近は合作映画を製作しています。河瀬直美監督『あん』では約34万人を動員しました。フランスでは15万人を動員するのが難しい中、いい数字を残せたと思います。また、濱口監督『寝ても覚めても』も約7万人を動員しました。

『寝ても覚めても』のプロジェクトが動き始めた頃、監督の名前はフランスでは知られていませんでした。そこで、前作の『ハッピーアワー』(2015)をこちらにいるジュリエットさんに観ていただいたところ、すぐに電話がかかってきまして「面白い。『寝ても覚めても』をやりましょう」と返事をいただきました。

ジール:(あの上映時間)5時間半の作品をご覧になったのですか?

シュラメック:いいえ、5時間17分です(笑)。劇場で拝見しましたよ。確かに、新人監督を扱うのはリスクがあります。しかし『寝ても覚めても』のシナリオを読んだ時、才能が溢れていると思いました。こういう無名で若い監督をフランスで守ってあげないといけないと思いましたね。結果的に『ハッピーアワー』がフランスで13万4,000人を動員するヒットとなり、監督の知名度が上がったことで『寝ても覚めても』のプロジェクトに参加することになりました。そしてカンヌ国際映画祭に選ばれればいいなと思って働きかけをしましたが、まさかコンペティション部門に選ばれるとは。わたしたちにとっても驚きでした。さらにアメリカ公開(5月17日)も決まりました。日本映画がアメリカでなかなか公開されない中、非常に画期的なことだと思います。

ジール:澤田さんが関わっている映画の国籍はどこになるのですか?

澤田:“フィルム・ノン・フランセ”です。

ジール:CNCのシネマ・ドゥ・モンドの助成を得ているのですよね?

澤田:われわれにとっては、とても重要な助成です。しかし最近、審査に通るのが難しくなってきています。ですので、海外セールス会社に権利を売って前金をもらうか、国内の配給権を売って資金調達をするか。または(独仏共同出資の放送局)アルテに放映権を売るか。しかしアルテでは(欧州文化を守るために)欧州圏以外の番組は年間2本しかピックアップしないという狭き門です。本当に困った時は、ドイツの助成金を頼りにしています。

ジール:シネマ・ドゥ・モンド以外の支援も紹介していただきましょう。

ローリー・アデス:今日は日本から映画関係者が多数いらしているので、アピールさせてください。フィルム・フランセはCNCのサポートを受けたタックスリベートを行う組織であり、フランスで長編映画、またはアニメーションを制作する時に、ぜひ活用していただきたいと思っています。残念ながら、ドキュメンタリーは受け付けていません。

わたしたちはラインプロデューサー(予算管理や製作進行を担う職務)などのスタッフも紹介できますし、日本語が分かるスタッフもおります。美術は2万点以上の資料を提供することができますし、スタジオ撮影についてもさまざまなサポートを用意しています。またフランス各地の30のフィルム・コミッションと連携していて、まだ海外に知られていない地域にプロデューサーをお連れし、ロケハンのお手伝いもします。ただし条件がありまして、制作費25万ユーロ(約3,125万円)以上。またその金額の半額をフランスで消費していただく必要があります。

最近では『ダンケルク』(2017)や『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)、さらに新テレビシリーズ「鉄腕アトム」もサポートしました。

>次ページは「日仏映画協力協定の意義」

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