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2019年 第32回東京国際映画祭コンペティション部門14作品紹介(2/3)

第32回東京国際映画祭

『ばるぼら』

製作国:日本、イギリス、ドイツ
監督:手塚眞
キャスト:稲垣吾郎二階堂ふみ

【ストーリー】
新宿駅でみすぼらしい姿で酔っ払っている少女・ばるぼらを拾ったベストセラー作家の美倉洋介。自堕落なばるぼらになぜか惹かれた美倉は、家から追い出すことができない。そしてばるぼらは、美倉の創作にとってミューズというべき存在となっていく。

【ここに注目】
手塚治虫の原作を息子の手塚眞監督が映画化し、主演に稲垣吾郎と二階堂ふみ、そして撮影にはクリストファー・ドイルといったら、これ以上何も言う必要はないと感じますが……。手塚監督のビジュアリストとしてのセンスとクリストファー・ドイルの撮影がうまく融合し、非常にユニークな作品に仕上がっています。人工的で幻想的なファンタジーの世界にエロスが加わり、その世界に稲垣さんと二階堂さんがフィットしていて、個性ではピカイチの1本です。手塚監督は自分の世界観を活かせる、手塚眞色を出せる父の原作はこれだと思ったと話していましたね。

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『列車旅行のすすめ』

製作国:スペイン、フランス
監督:アリツ・モレノ
キャスト:ルイス・トサルピラール・カストロ

【ストーリー】
列車に乗る女性に精神科医を名乗る向かいに座る男性が元患者の話を始める。コソボ戦争で負傷した男や結婚に失敗した女、怪しい医師など一癖も二癖もある登場人物たちのエピソードが複雑に交錯していく。

【ここに注目】
これはカロリーの高い作品です(笑)。原作はスペインで話題になった小説で、アリツ・モレノ監督は映画化に6年の歳月をかけたそうです。列車の中から始まり、場面がフラッシュバックへと転じ、また別のフラッシュバックへ、別の話へと飛んでいきます。マトリョーシカのような入れ子の物語構造で、なおかつ各エピソードの熱量が高くユーモアは超ブラック。最終的にひとつに収束していく複雑な物語を、この新人監督がどう料理しているかというところが見どころです。

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『ディスコ』

製作国:ノルウェー
監督:ヨールン・ミクレブスト・シーヴェシェン
キャスト:ヨセフィン・フリーダ・ペターセンシャスティ・オッデン・シェルダール

【ストーリー】
ディスコダンスの大会で何度も優勝しているミリアムが、スランプに陥ってしまう。ミリアムの家族は宣教師で、厳格な信仰心をもっていた。家族はミリアムのダンスを応援する一方で、彼女が不調になると信仰を押し付けてきて……。

【ここに注目】
『ディスコ』はかなり珍しいタイプの作品です。西側世界がイスラム教を恐れることと裏返しに、キリスト教信仰の極端さもまた世界を脅かすひとつの要素だということがこの映画でよくわかります。映像のシャープな美しさも、恐ろしさを深めていますね。また、主人公の若い女性の決断がひとつのポイントで、とても個性的な青春映画になっています。主演女優のヨセフィン・フリーダ・ペターセンは、北欧で記録的大ヒットになった青春テレビドラマの主演を務めた現地のスターだそうです。

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『湖上のリンゴ』

湖上のリンゴ
(C) Kaz Film

製作国:トルコ
監督:レイス・チェリッキ
キャスト:タクハン・オマロフズィエティン・アリエフ

【ストーリー】
トルコの辺地。伝統楽器の師匠の元で修行をしている少年が、結婚式やお祭りで演奏する師匠のお供で旅に出る。少女に村では手に入りにくいリンゴがお土産に欲しいと頼まれ、少年はリンゴを持ち帰ろうとするが……。

【ここに注目】
レイス・チェリッキ監督は、第25回東京国際映画祭で上映された『沈黙の夜』(2012・日本未公開)で最優秀アジア映画賞を受賞している人物です。『沈黙の夜』は社会問題を扱っていましたが、『湖上のリンゴ』は美しい寓話。伝統的な弦楽器の修行をしている少年を中心にした物語で、音楽が素晴らしく、村が大事にしている文化や彼らが暮らす山々の環境といった、かけがえのないものの大切さが身にしみるような作品です。少年の初恋物語でもあり、ユニークな自然派という見方もできます。

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