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2019年 第32回東京国際映画祭コンペティション部門14作品紹介(3/3)

第32回東京国際映画祭

『ラ・ヨローナ伝説』

製作国:グアテマラ、フランス
監督:ハイロ・ブスタマンテ
キャスト:マリア・メルセデス・コロイマルガリタ・ケネフィック

【ストーリー】
内戦時に政府によって大量虐殺が行われたグアテマラ。虐殺を命じた罪で告発されている将軍の大きな屋敷では、使用人がみな辞めていき、どこか陰のある女性が使用人として雇われる。

【ここに注目】
今年の中南米映画はこの1本です。ラ・ヨローナ伝説は中南米に伝わる怪談ですが、この作品はホラーではなく、ラ・ヨローナを取り入れた現代が舞台のドラマ。グアテマラでは1980年代に大量虐殺があり、その厳しい現代史も題材になっています。ラ・ヨローナ伝説は水と縁が深く、この作品も水がひとつのポイントとなります。映像はビビッドで美しく、シャープ。監督のハイロ・ブスタマンテは『火の山のマリア』(2015)が第65回ベルリン国際映画祭でも話題になった才能のある人で、日本でも2016年に公開されました。奇妙でユニークな世界観をお楽しみいただきたい作品です。

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『マニャニータ』

製作国:フィリピン
監督:ポール・ソリアーノ
キャスト:ベラ・パディーリャロニー・ラザロ

【ストーリー】
凄腕スナイパーとして活躍していた元軍人の女性。顔に大きなあざのある彼女は殻に閉じこもりがちで、夜な夜なバーで酒をあおっていた。鬱々と暮らす彼女に、ある日、運命を変える1本の電話がかかってくる。

【ここに注目】
ヒロインは延々とビールを飲んでいるんです。最初と最後に大きな山があり、その間はヒロインの心の闇が描かれていきます。物語の進行がゆっくりしているのですが、画面から目を離せない。理由は、脚本を『立ち去った女』(2016)の監督であるラヴ・ディアスが担当しているため。監督はポール・ソリアーノというメジャー作品を撮っている人で、彼との相性がいい。さらに、カメラマンは『ローサは密告された』(2016)などブリランテ・メンドーサ作品のスタッフ。今のフィリピン映画界の重要人物が集結している作品だと言え、アート系の映画が好きな人にはたまらないと思います。

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『ネヴィア』

製作国:イタリア
監督:ヌンツィア・デ・ステファノ
キャスト:ヴィルジニア・アピチェラピエトラ・モンテコルヴィーノ

【ストーリー】
イタリア、ナポリ近郊の寂れた町。17歳の少女ネヴィアは違法な商売でなんとか生活費を稼ぐ祖母と暮らしながら、健気に妹の面倒をみている。そんなある日、ネヴィアは近くにやってきたサーカスの一座を手伝うようになり……。

【ここに注目】
近年、イタリアではナポリが舞台の映画が本当に多いんです。『ネヴィア』はナポリ周辺地域が舞台で、健気に生きる少女の世界がサーカスとの出会いによって少し広がっていくという物語。少女の生き様が瑞々しくとらえられています。ポイントのひとつは、『ゴモラ』(2008)のマッテオ・ガローネ監督がプロデューサーであること。実は監督のヌンツィア・デ・ステファノはガローネ監督の元妻で、今も業務上のパートナーシップを維持しているんですね。ガローネ作品の持つリアリズムは『ネヴィア』でも感じられると思います。

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『戦場を探す旅』

戦場を探す旅

製作国:フランス、コロンビア
監督:オーレリアン・ヴェルネ=レルミュジオー
キャスト:マリック・ジディレイナール・ゴメス

【ストーリー】
1860年頃、フランス人報道カメラマンのルイは、出兵したフランス軍と植民地の実態を取材するためにメキシコへ行くが、計画通りには進まず、なかなか戦場へたどり着けない。そんななか、ルイはメキシコの農民であるピントと出会い、友情を深めていく。

【ここに注目】
今年のコンペ部門では唯一の歴史モノ、舞台が19世紀の作品です。戦場カメラマンという職業が生まれて間もない時代に、戦地の様子を伝えようとメキシコまでやって来た主人公がそれを報道することに悩みます。報道の倫理の問題は今の時代にも通じていますし、また地元の人との交流や友情の物語でもあり、普遍的なテーマが扱われています。一方で、山の中の荒々しい自然がとても美しく映し出されていて、見応えのある作品です。

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