年末年始映画特集2022-2023~劇場洋画編~
SF大作、伝記ドラマ、ドキュメンタリー、人間ドラマ、ミステリーにホラーまで、あらゆるジャンルの作品が目白押しの年末年始。ここ一番の秀作が出そろう時期だけに、あれもこれも観たくなってしまう。劇場公開される洋画の中から、年末年始にこそゆっくり堪能してもらいたい作品をチョイスしました。(文・平野敦子)
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』公開中
監督・原案・共同脚本:ライアン・クーグラー
キャスト:レティーシャ・ライト、ルピタ・ニョンゴ
161分
アメコミ映画史上初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされた『ブラックパンサー』の続編。国王であり、ヒーローでもあるティ・チャラを失った超文明国家ワカンダで、ティ・チャラの妹シュリや幼なじみのオコエ、元恋人のナキア、母であるラモンダ女王の前に新たな敵が立ちはだかる。前作でも監督などを務めたライアン・クーグラーが今回も監督を手掛け、『アベンジャーズ』シリーズなどのレティーシャ・ライト、『それでも夜は明ける』などのルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、アンジェラ・バセットらが出演。前作を超える陸・海・空でのアクションと、ブラックパンサーの死と向き合い再生を果たすエモーショナルな物語に心奪われる。
『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』公開中
監督・共同脚本:ウィル・シャープ
キャスト:ベネディクト・カンバーバッチ、クレア・フォイ
111分
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』などのベネディクト・カンバーバッチが主演を務め、19世紀末から20世紀にかけて、猫の絵で人気を博したイギリスの画家ルイス・ウェインに迫る伝記ドラマ。結婚後間もなく死別した妻亡き後、彼女と共に飼い始めた子猫ピーターを相棒に、猫の絵を描き続けた画家ルイスの人生を描き出す。ドラマシリーズ「Giri / Haji」などで俳優としても活躍するウィル・シャープが監督を手掛け、『女王陛下のお気に入り』などのオスカー女優オリヴィア・コールマンがナレーションを担当する。妻への愛を胸に、当時主流だった犬ではなく、猫に心血を注いで生涯描き続けた画家の数奇な運命に引き込まれる。
『あのこと』公開中
監督・共同脚本:オードレイ・ディヴァン
キャスト:アナマリア・ヴァルトロメイ、サンドリーヌ・ボネール
100分
第78回ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した人間ドラマ。「シンプルな情熱」が映画化もされた、アニー・エルノーの自伝的小説「事件」を基に、人工妊娠中絶が法律で禁止されていた1960年代のフランスを背景に、予期せぬ妊娠をした大学生アンヌの12週間にわたる苦悩を映し出す。『ナチス第三の男』などで脚本家としてキャリアを積んできたオードレイ・ディヴァンが監督を手掛け、『ヴィオレッタ』などのアナマリア・ヴァルトロメイが主人公アンヌを演じている。前途有望な若い女性が、妊娠によって未来を夢見ることができなくなり、途方に暮れる姿を彼女の目線で臨場感たっぷりに描く映像に固唾(かたず)をのむ。
『MEN 同じ顔の男たち』公開中
監督・脚本:アレックス・ガーランド
キャスト:ジェシー・バックリー、ロリー・キニア
100分
『エクス・マキナ』などのアレックス・ガーランドが監督と脚本を担当するホラー。夫の死を目の当たりにした女性が、心の傷を癒やそうと訪れたイギリスの田舎町で、豪華なカントリーハウスの管理人ジェフリーと同じ顔をした男たちと次々出会うことになる恐怖を描く。『ロスト・ドーター』で第94回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたジェシー・バックリーが主演を務め、同じ顔の男たちを『ピータールー マンチェスターの悲劇』などのロリー・キニアが演じ、パーパ・エッシードゥらが共演する。連鎖する不可解な出来事、夫の死のトラウマなどに主人公がジワジワと追い詰められていくさまに戦慄(せんりつ)する。
『チーム・ジンバブエのソムリエたち』公開中
監督・共同脚本:ワーウィック・ロス、ロバート・コー
キャスト:ジョセフ・ダファナ、マールヴィン・グウェス
96分
ジンバブエから南アフリカに逃れた難民4人が、フランス・ブルゴーニュで開催される世界ブラインドワインテイスティング選手権に挑む姿を描くドキュメンタリー。南アフリカに来るまではワインとは無縁だった4人のソムリエが、クラウドファンディングの支援を受け、ジンバブエチームとして世界トップクラスのソムリエたちと競い合う。『世界一美しいボルドーの秘密』などのワーウィック・ロスと、ロバート・コーが監督を担当。限られた予算の中で、さまざまな苦難を乗り越え、23か国から集まった一流ソムリエたちと明るく前向きに勝負する4人の実直さと真面目さ、そして短期間でここまで成長した驚異的な彼らの舌に驚くばかりだ。
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』公開中
監督・原案・共同脚本:ジェームズ・キャメロン
キャスト:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ
192分
ジェームズ・キャメロン監督によるヒット作の続編で、前作の10年後の世界を描くSF大作。神秘の星パンドラに再び人類がやって来たことから、パンドラの森で平和に暮らしていた元海兵隊員ジェイクと、先住民の女性ネイティリが築いた家族は神聖な森を追われる。今回もキャメロンが監督を務め、前作同様元海兵隊員をサム・ワーシントン、先住民の女性をゾーイ・サルダナが演じ、ジョエル・デヴィッド・ムーア、スティーヴン・ラング、ジョヴァンニ・リビシ、ケイト・ウィンスレット、シガーニー・ウィーヴァーらが豪華共演。主にパンドラの海の世界が舞台となり、最新の3D映像による、前作より進化したパワフルかつ美しい映像世界に魅了される。
『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』12月23日公開
監督:ケイシー・レモンズ
キャスト:ナオミ・アッキー、スタンリー・トゥッチ
146分
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』などのナオミ・アッキーを主演に迎え、歌手で女優のホイットニー・ヒューストンの半生を描く伝記ドラマ。母親のステージで歌っているところを、名プロデューサーのクラヴ・デイヴィスにスカウトされ、スターダムに駆け上がって行く姿を映し出す。『ハリエット』などのケイシー・レモンズが監督、『ボヘミアン・ラプソディ』などのアンソニー・マクカーテンが脚本を担当し、『スーパーノヴァ』などのスタンリー・トゥッチらが共演。数々の名曲はもとより、スーパーボウルでの国歌斉唱シーンなどの映像と、48歳でこの世を去った伝説の歌姫の偉業に目をみはる。
『カンフースタントマン 龍虎武師』2023年1月6日公開
監督:ウェイ・ジェンツー
キャスト:サモ・ハン、ユエン・ウーピン
92分
アクション映画史に大きく貢献した香港カンフーアクションで、危険を顧みずアクションの代役を務めたスタントマンと、彼らが活躍した香港映画の黄金期を振り返るドキュメンタリー。主に1970年代から1980年代にかけて製作された多数のアクション映画と、それを支えた命知らずのスタントマンたちの姿に迫る。ブルース・リー、サモ・ハン、ジャッキー・チェン、ユエン・ウーピン、ドニー・イェン、ツイ・ハーク、エリック・ツァン、アンドリュー・ラウらビッグネームが並ぶ香港映画界。香港映画人、そして彼らと共に歩んだスタントマンの証言や本編映像、貴重なメイキングシーンなどでつづられる香港映画の明暗を描く内容に熱狂する。