ピンクなだけじゃない!メッセージ性を秘めた『バービー』の評価は?
編集者レビュー
『バービー』2023年8月11日公開
世界中で発売されているファッションドール、バービーを映画化したファンタジー。ハッピーな毎日を送ることのできるバービーランドで暮らすバービーとケンが、リアルワールド(人間の世界)に迷い込む。バービーを『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』などのマーゴット・ロビー、ケンを『ラ・ラ・ランド』などのライアン・ゴズリングが演じる。監督は『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』などのグレタ・ガーウィグ。
編集部・浅野麗 評価:★★★★
世界中からピンクのインクが消えたというくらい徹底して作られた夢の世界は、何もかもがかわいくて、ちょっとおかしい。こんなテーマパークがあったら間違いなく行ってみたいと思う完璧な世界観だ。そして、これ以上のハマリ役はいないだろうというマーゴットのバービーは、何を着たってかわいいし、物事を深く考えない、ちょっと頭が弱そうな感じもまた絶妙に表現されていていい。当て書きされたというライアン演じるケンといい、文句なく完璧なバービー&ケンだ。
だが、もちろん単なるお人形劇では終わらない。理想のバービーランドから、現実の世界へと飛び出した2人。想像もしなかった真実に次々と直面しながらも、それぞれの受け止め方でさらなるトラブルへと発展させてくれるから面白い。変化を望まない世界の住人たちが出会ってしまった変化に、戸惑いながらも乗り越えていくさまは見ていて力が湧いてくる。カギを握るアメリカ・フェレーラの熱演も女性たちにはグッとくるものがあるだろう。
オリジナリティーやメッセージ性のバランスの良さもさることながら、やはり際立っているのはユーモアのセンス。最後の最後まで気が抜けないのもまた魅力的だ。
編集部・香取亜希 評価:★★★★★
多様性が叫ばれる現代において、一見するとステレオタイプのようなバービーを実写化することに当初は違和感を覚えたが、ふたを開けてみるといい意味で期待を裏切ってくれた。実写版『バービー』は、決してバービーを理想化しておらず、バービー自身も自らのアイデンティティーに疑問を抱いているところが面白い。
女の子たちに夢とパワーを与えていると信じていたバービーが現実を知り、バービーのオマケ的な存在でしかなかったケンが“男性社会”に目覚めるという展開に、改めてジェンダーレスな社会の必要性を考えさせられる。
とはいえ、説教臭いことはまるでなく、ポップな歌とダンス、絶妙な笑いとともにエンタメ作品として成立している。それは、マーゴット・ロビーやライアン・ゴズリングら演技派の面々と、監督と脚本を手掛けたグレタ・ガーウィグのなせる業。いつの間にかバービーとケンに感情移入し、彼らの葛藤に涙するほど。女としての生き方に泣き、男としての生き方にも泣ける。ただピンクでかわいいだけじゃない! 老若男女、全人類に向けた応援ムービーだ。
『バービー』あらすじ
“バービーランド”はどんな自分にでもなれる、夢のような場所。そこに暮らすバービー(マーゴット・ロビー)は、ある日突然、体に異変を感じる。バービーは原因を追求するべく、ボーイフレンドのケン(ライアン・ゴズリング)と共に人間の世界へとやってくる。そこでバービーは、自分の思い通りにならない経験をする。