『ローグ・ワン』監督の日本愛が詰まった近未来SF『ザ・クリエイター/創造者』評価は?
編集者レビュー
『ザ・クリエイター/創造者』2023年10月20日公開
人類とAIの戦いが勃発した近未来を舞台に描くSFアクション。危険なミッションに挑んだ退役軍人が、潜入先でヒューマノイドの少女と出会う。監督などを務めるのは『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などのギャレス・エドワーズ。『TENET テネット』などのジョン・デヴィッド・ワシントン、『怒り』などの渡辺謙、ジェンマ・チャン、アリソン・ジャネイらがキャストに名を連ねる。
編集部・入倉功一 評価:★★★★
『GODZILLA ゴジラ』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に抜擢されたギャレス・エドワーズ監督が、大作の経験を経て、オリジナルストーリーで勝負するSFアクション。人類とAIが争う近未来を舞台に、高度なAI兵器とされる少女型のヒューマノイドと、その破壊を命じられた元特殊部隊員の奇妙な絆が描かれる。『ブレードランナー』のような荒廃した近未来とタイやベトナム、カンボジアなど東南アジアのイメージが融合した、機械と自然が同居する未来世界のビジュアルが、実にリアルで刺激的。壮大なスケールのSF作品でありながらVFXに頼り切らず実際のロケーションにこだわって撮影した素材を基に世界観を生み出したといい、映像のリアリティーにも納得だ。
また、ところどころに登場する日本語の看板や、東京の姿がチラつく未来都市など、そこかしこにエドワーズ監督の熱い日本愛が感じられる。かつて、低予算SF『モンスターズ/地球外生命体』のVFXを、自ら自宅PCで作り上げたエドワーズ監督の原点ともいえる、インディペンデント魂を感じる力作になっている。
編集部・倉本拓弥 評価:★★★★★
『GODZILLA ゴジラ』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』でSFファンを虜にしたギャレス・エドワーズ監督が、デビュー作『モンスターズ/地球外生命体』と同じオリジナル作品に原点回帰を果たしたSF大作。ベトナムを舞台にした『ブレードランナー』という構想から、東南アジアのオリエンタルな風景に、ハイテクな宇宙船が飛び交う、斬新で神秘的なビジュアルは、エドワーズ監督のVFXアーティストとしての本領を存分に発揮している。デス・スターを彷彿させる超巨大兵器、AIシミュラントと呼ばれる模造人間の洗練されたデザインもSF映画ファンの心をくすぐる。
エドワーズ監督が注いだ日本愛は過去作と比較してもかなりあふれ出ている。渋谷で実際に撮影された日本パートや、『AKIRA』や黒澤映画をリスペクトしたカットなど、至る所に色濃く現れている。『ローグ・ワン』のセルフオマージュ的なエッセンスも、SF好きにはたまらない。エドワーズ監督作品の真骨頂であり、彼がSF映画の未来を担う存在であることを改めて認識した。
『ザ・クリエイター/創造者』あらすじ
AIがロサンゼルスで核爆発を引き起こした、今から50年後の未来。人類とAIの戦いが10年にわたって続く中、高度なAI兵器を生み出した創世者「クリエイター」の暗殺ミッション遂行のため、退役軍人のジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)が敵地へ潜入する。彼がクリエイターの居場所を突き止めると、そこには少女の姿をしたヒューマノイド(マデリン・ユナ・ヴォイルズ)がいた。