役所広司がカンヌ男優賞!映画『PERFECT DAYS』評価は?
編集者レビュー
『PERFECT DAYS』2023年12月22日公開
『世界の涯ての鼓動』などのヴィム・ヴェンダース監督と、『ファミリア』などの役所広司が組んだヒューマンドラマ。東京・渋谷の公衆トイレ清掃員の何げない日常を映し出す。『スラッカーズ』などの柄本時生のほか、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和らがキャストに名を連ねている。第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、役所が日本人として19年ぶり2人目の最優秀男優賞に輝いた。
編集部・市川遥 評価:★★★★★
主人公は、一瞬一瞬に小さな喜びと美しさを見いだしながら生きる公共トイレの清掃員・平山。現代人が忘れてしまったような、そんなささやかだが豊かな生き方を、名優・役所広司がその表情、佇まいだけで雄弁に表現しており、何か派手な事件が起きるわけではないのだが、目も心も奪われる。
ヴィム・ヴェンダース監督は役所とのタッグを待ちわびていたといい、彼も役所が作り上げた平山に心底ほれ込んでいることがスクリーンからひしひしと伝わってくる。平山が目覚め、仕事へ行き、また眠りにつくまでの日常を、少しずつ切り取り方を変えていくことで、新鮮に映し出していくのは、さすが巨匠というべき手腕。役所の名演とヴェンダース監督の匠の技が、観客が平山の“完璧な日々”を追体験することを可能にしているのだ。美しい公共トイレ、そして新しさと古さが混在する東京の情景の数々も、ユニークな魅力となっている。
編集部・倉本拓弥 評価:★★★★★
一見繰り返しに見えるトイレ清掃員・平山の何気ない日常だが、本作では全く同じ構図が一度たりとも登場しない。平山の生活における些細なこだわり、季節ごとの風景の微妙な変化まで、巨匠ヴィム・ヴェンダース監督の切り取り方が秀逸で、敬愛する小津安二郎監督や日本に対するリスペクトが、平山の日常を通して伝わってくる。
最大の見どころは、役所広司の神がかった演技。物静かで幸福感に満ちた平山を繊細に表現し、彼があたかも実在するかのようなリアリティーを生み出し、観客を惹きつける。クライマックスシーンは、役所のキャリア史上最高とも言える名演が輝き、その美しさに思わず涙が溢れる。カンヌ映画祭で19年ぶり2人目の快挙となる男優賞受賞、日曜劇場「VIVANT」での名演も含め、2023年は役所広司イヤーと言っても過言ではない。
『PERFECT DAYS』あらすじ
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山(役所広司)は、変化に乏しいながらも充実した日々を送っていた。同じような日々を繰り返すだけのように見えるものの、彼にとっては毎日が新鮮で小さな喜びに満ちている。古本の文庫を読むことと、フィルムカメラで木々を撮影するのが趣味の平山は、いつも小さなカメラを持ち歩いていた。