映画『ラストマイル』評価は?「アンナチュラル」「MIU404」のメンバーも登場!
編集者レビュー
『ラストマイル』2024年8月23日公開
ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」などの演出を手掛けた塚原あゆ子監督と、脚本の野木亜紀子が再び組んだサスペンス。世界的ショッピングサイトから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生し、やがて連続爆破事件へと発展していくさまが描かれる。満島ひかり、岡田将生のほか「アンナチュラル」から石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、松重豊ら、「MIU404」から綾野剛、星野源、麻生久美子らが出演。
編集部・石井百合子 評価:★★★★★
「アンナチュラル」「MIU404」などのヒットドラマを生んだ脚本・野木亜紀子、塚原あゆ子監督、新井順子プロデューサーが映画で初のタッグを組んだ本作。舞台は物流業界で、主人公はショッピングサイトの関東センター長に配属された舟渡エレナ(満島ひかり)。冒頭で世界規模のショッピングサイトから配送された荷物が爆発した瞬間から終始緊迫感が漂い、緻密に張り巡らされた伏線や、腹の内が読めない舟渡のキャラクター像から目が離せない。
タイトルの「ラストマイル」とは物流において客へ荷物を届ける過程の最後の区間を表す言葉。劇中で描かれる、クリック一つで商品が翌日届く“便利”な世の中は、ショッピングサイトのスタッフ、サイト商品の運搬を担う運送会社、委託ドライバーと多くの機関の連携から成り立っており、やがてそれらが事件でつまびらかになっていく“負の仕組み”や多くの“犠牲”から、今の世の中がいかに危ういのか思い知らされるはずだ。脚本の野木は「アンナチュラル」や「MIU404」でも虐待、外国人技能実習生の搾取、過労死、いじめなどの問題を取り上げているが、本作はあらためて野木が社会派の作家であり、弱者に目線を向ける姿勢が軸にあることを物語っている。
編集部・入倉功一 評価:★★★★★
クリックひとつで届くショッピングサイトから届く商品に、爆弾が仕掛けられていたら……。ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の塚原あゆ子監督と脚本家の野木亜紀子が再タッグを組んだ本作は、いつ爆発するかも知れない爆弾をめぐるスリリングなストーリーと、個性的なキャラクターが織りなすウィットに富んだ会話劇、そして両ドラマのキャストも動員するファンサービスを巧みに詰め込んだ、見どころ満載の娯楽作となった。
エンタメに徹しながらも、過去作でも常に社会問題への痛烈なメッセージや弱者の声を拾い上げてきた塚原&野木コンビ。満島ひかり演じる、ショッピングサイトの関東配送センター長を主人公に据えた本作でも、運送会社、委託ドライバー、消費者と、物流にかかわる全ての人々にフォーカスし、現代社会の抱える労働問題に対する鋭い視点が光る。“物流の2024年問題”が騒がれるよりも前に書かれた、先見性ある野木の脚本には今回も舌を巻くばかりだ。
あらすじ
ブラックフライデー前夜の11月、ビッグイベントにより流通業界が繁忙期を迎えようとする中、有名なショッピングサイトから配送された段ボールが爆発する事件が起きる。さらに事件は全国へと拡大し、日本中が混乱に陥る。巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)と共に、未曽有の事態の収拾に追われる。