カンヌで是枝裕和監督の『空気人形』大好評!100媒体以上の取材殺到
第62回カンヌ国際映画祭
第62回カンヌ国際映画祭に映画『空気人形』で参加中の是枝裕和監督、韓国女優ペ・ドゥナ、ARATAが現地時間15日、日本記者向けにインタビューに答えた。その席上、ペ・ドゥナが是枝監督への不満をぶちまけた。
ペ・ドゥナの出演作は過去、映画『グエムル -漢江の怪物-』が「監督週間部門」で上映されているが、カンヌ入りは初めて。映画祭にはあまり興味がなかったそうだが、今回は是枝監督から「カンヌへ行っておいしいものを食べようよ」と甘い言葉に誘われてやって来たという。しかし蓋を開けてみれば、この2日間取材だらけでプライベートの時間もほとんどないという。
これは映画が好評ゆえのうれしい反応で、是枝監督は4日に渡って国内外100以上の媒体の取材を受けるという。しかし、インタビュー中に是枝監督の真意を聞いて、だまされた! と思ったらしい。カンヌに参加する意義を尋ねられた是枝監督が、「普通の映画祭は楽しみだけど、カンヌだけは戦場。しかも組織戦。配給・宣伝などどういうチームと組んで、一本の映画をコントロールしていくかシビアな戦いの場。きちんと準備してこないといけない場所だと、来る度に学んでいます。これは(本作の)プロデューサー的な立場もあるからかもしれないけれど、ここは夢を語る場所じゃない」とキッパリ。
この発言にはARATAも反応し、「僕も『カンヌでおいしいものを食べよう』と言われた」と苦笑い。ドゥナに至っては、是枝監督の腕をポコポコとパンチしながら口をとがらせた。 もっとも、前夜の公式上映で拍手を浴びたときの感動を思い出したのか、ペ・ドゥナは「でも、昨日は楽しかったから、もう一回(カンヌに)来てもいいかな」とちゃめっ気たっぷりに態度を変え、記者たちを笑わせていた。
一方本作は、完成を直前の今年3月に、是枝監督をデビュー映画『幻の光』からずっと支え、本作にも企画として参加している「エンジンフィルム」の安田匡裕会長が急逝するという不幸があった。是枝監督は「今後の僕の映画作りは、確実に変わると思います。いや、変わらざるを得ないと思います。今まで僕は、安田さんがいたから映画が撮れていたと思うし、甘え過ぎていたとも思います。いいようにとらえると、『もう自分を頼らなくても、やっていけるだろう』と思われたのかも……。最期にこの映画と、西川美和監督の『ディア・ドクター』を見届けてくれた。この2本を今年、いい形で公開できるように頑張りたい」と故人をしのびつつ、決意を新たにしていた。