青山真治監督、赤ずきんを題材にしたルー・カステル主演作の秘話明かす
映画『共喰い』『東京公園』などの青山真治監督が25日、渋谷のシアター・イメージフォーラムで「マルコ・ベロッキオ特集上映」開催記念トークショーを行った。
ベルナルド・ベルトルッチと共に現代イタリア映画をけん引してきた巨匠マルコ・ベロッキオの日本初公開を含む5作品を一挙上映する本特集。常々、映画監督を志したきっかけとして、ベロッキオの鮮烈なデビュー作『ポケットの中の握り拳』があったことを公言している青山監督が、この日の同作上映後にゲストとして出席した。
同作は、家族や宗教といった既成の価値を全て否定しようとする怒れる若者が破滅に向かうさまを暴力的に描き出したドラマ。今回、改めて本作を見直してみたという青山監督は「あの時代のヨーロッパで、ロンドンで映画の勉強をして(イタリアに)帰ってきたマルコ・ベロッキオ。もう一人は狂ったジェームズ・ディーンと呼ぶべき(同作主演の)ルー・カステル。そんな二人がデビュー作でぶつかった結果がこの映画なんだと気が付いて、改めて好きになりましたね」とコメント。
青山監督は、2008年にそのルー・カステル主演で、赤ずきんを題材にした『Le Petit Chaperon Rouge』という短編映画を制作している。「パリの知り合いが映画を撮らないかと言ってきたので『いいよ』と。そういうことでパリに行って撮影した」と切り出した青山は、「ルーの家の前にあるピザ屋で通訳の人を介して、映画について、ずっとああでもないこうでもないとディスカッションをしていました」と振り返る。
さらに「日本では、山崎努さんがそういう方で。山崎さんの家に呼ばれるとまず、『俺はこの本ではできない』と言われるんです。そこから、夜中までディスカッションですよ。山崎さんの自宅なので、こういう資料があるんだよとか、資料がどんどん出てくる。さんざんやったあとに、『今日はこんなもんかな。また来週来い』といった感じで続くわけです。どちらかというと俳優さんは、せーので現場に飛び込むことを好みがちですが、山崎さんやルーは、最初に不安材料をつぶすタイプの俳優なんですよ」と名優たちとの仕事について語っていた。(取材・文:壬生智裕)
「マルコ・ベロッキオ特集」はシアター・イメージフォーラムにて開催中