宮崎駿監督、元ジブリ米林監督の新作に「俺は観ない」
米林宏昌監督が22日、都内で行われたアニメーション映画『メアリと魔女の花』スペシャルトークイベントに登壇し、恩師でもあるスタジオジブリの宮崎駿監督に、本作を観てもらえなかったことを打ち明けた。この日は米林監督のほか、杉咲花、神木隆之介、小日向文世、佐藤二朗、遠藤憲一、大竹しのぶ、西村義明プロデューサーも来場した。
『借りぐらしのアリエッティ』(2010)、『思い出のマーニー』(2014)の監督を務めた際に在籍していたスタジオジブリを2014年に退社し、スタジオポノックを設立した米林監督。本作はそこでの記念すべき第一作目となる長編作品で、禁断の“魔女の花”により不思議な力を手に入れた少女メアリが、自分がついた一つの嘘によって引き起こされた魔女の国での大事件に立ち向かう姿をファンタジックに描いている。
以前、この作品の制作を決意した当初にスタジオジブリの宮崎監督と鈴木敏夫プロデューサーから「覚悟を持ってやれ」という奮起させられる言葉をもらい、高畑勲監督からは「面白いな」と興味を持たれていたことを語っていた米林監督と西村プロデューサー。
その後ついに完成した新作を持ってジブリを訪ねたという米林監督は「宮崎監督は『俺は観ない』と言って観てくれなかったんです」と苦笑い。しかし、「よく頑張った」とねぎらいの言葉をかけてくれたことも明かすと、「作品(の完成)が遅れに遅れていたものですから、『本当にできるのか!?』と心配してくださっていたので、無事に完成を報告することができてうれしく思っています」と安堵の表情を見せた。
また、西村プロデューサーは、鈴木プロデューサーから「よく頑張った。ジブリの呪縛から解き放たれるとこういう映画を作るのか。素直に伸び伸びといい作品を作ったな」と称賛の声を、ファンタジー映画が嫌いなため、感想を聞くことが「一番緊張した」という高畑監督からは、「好感がもてる映画です。ただ、私が好感を持つということは、この映画の成功は危ういんじゃないかな……」と皮肉交じりに褒められたことを紹介した。
「米林監督が『ジブリ人生約20年のすべてを費やす!』と明言してスタートしたその結果が作品に出ている」と自信をみなぎらせる西村プロデューサー。米林監督も「2年半かけて一生懸命作ってきました」と胸を張ると、「映画の中で、メアリは途中で魔法の力を失ってしまう。その時にどんな気落ちで立ち上がって前に進むか……。この映画を観て、自分も一歩を踏み出す勇気を持ってもらえたらと思います」とまるで自分とメアリを重ねるかのようなコメントを添えて、映画をアピールしていた。(取材/錦怜那)
映画『メアリと魔女の花』は7月8日より全国公開