高校生のカンニングビジネス…実際のスキャンダルに基づいたタイの大ヒット作
第16回ニューヨーク・アジア映画祭のオープニングナイト作品『バッド・ジニアス(英題) / Bad Genius』について、ナッタウット・プーンプリヤ監督、女優チュティモン・ジュンジャルーンスックイン、男優チャーノン・サンティナタラクンが、6月30日(現地時間)リンカーンセンターのウォルター・リード・シアターで行われた記者会見で語った。
本作は、中国で実際に起きたスキャンダルを基にしたタイの話題作。奨学金を受ける優秀な高校生のリン(チュティモン)はある日、試験でカンニングさせ友人の手助けをする。すると、同級生たちから同様の要求が殺到。リンはカンニングビジネスを始め金儲けをするうちに、いつしかそのビジネスはSAT(アメリカの大学進学適性試験)にまで発展していき……。チャーノンは学内2位の成績で初めはリンの行為に反対するが、いつしか彼女に加担するバンクを演じた。
脚本についてプーンプリヤ監督は「僕が最後に受けたテストは、約20年前だから、(生徒時代を振り返って脚本を書くのは)とても大変だったよ。今作では僕以外に2人の脚本家が関わってくれて、リサーチも含め約1年半脚本を書き上げるのに費やしたんだ」と苦労を語った。複雑な構成の脚本になっており、最初から最後までスリリングな展開が繰り広げられていくが、実話を基にしたストーリーであることについては「数年前に中国でSATのカンニングのスキャンダルがあって、それを基にしているんだ。その実話を基にキャラクターを構成していったんだよ」と答えた。
今作が映画初出演となる主演のチュティモンは「演技が初めてということだけでなく、映画が教育の問題にも関わっていたので、とても緊張したの」と切り出し、「わたし以外の俳優は他の作品への出演など演技経験があったから、彼らの助けもあって、なんとか今作を乗り越えられたと思うわ」と初々しく撮影を振り返ると、チャーノンが「撮影1か月前から俳優たちが集まってリハーサルを行い、チームワークを高めていったんだ」とそのサポートぶりを明かした。
タイの映画界は検閲が厳しいそうだが、このような題材に関してカットされた箇所はあったかと聞かれると「検閲の人に映画を見せる前は、問題になるシーンが数か所はあると思っていたんだ。でも、実際に彼らに見せたら、誰もがこの映画を評価をしてくれて、結局検閲には引っかからなかったんだよ」とプーンプリヤ監督。作品の実力で検閲をも納得させたようだ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)