実写版『人狼』製作中!ワーナー・ブラザース・コリアが出資
ソン・ガンホ主演『密偵』(上映中)を韓国で観客動員750万人突破の大ヒットに導いたワーナー・ブラザース・コリア代表のチェ・ジェウォン氏がこのほどインタビューに応じた。同社はキム・ジウン監督の新作で、押井守原作・脚本のアニメ『人狼 JIN-ROH』(1999)の実写映画版にも出資。実はキム監督が『密偵』を引き受ける際、実写版『人狼 JIN-ROH』の金銭面のサポートを条件に出していたことを明かした。
『人狼 JIN-ROH』は、失業者と凶悪犯罪が急増する東京を舞台に、反政府治鎮圧部隊の男とゲリラ組織の少女の出会いを描いた長編アニメーション。『ももへの手紙』(2012)で知られる沖浦啓之監督の初監督作で、第49回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で上映されたほか、第54回毎日映画コンクールアニメーション映画賞を受賞するなど国内外で高い評価を得た。
日本文化に強い興味を示し、度々プライベートでも来日しているというキム監督が、日本の制作サイドの許諾を得て実写映画化を企画。2013年には釜山国際映画祭の企画マーケットに参加し、出資者を募っている。チェ氏は「実は企画開発は4年半前から行っていました。その間、(韓国の大手映画会社である)CJエンタテインメントやSHOWBOXにも企画が行ったり来たりしたのですが、実現しなかったんです」と説明する。
その最大のネックが巨額の製作費だったという。『密偵』の3~4割増しとなる約200億ウォン(約20億円。1ウォン=0.1円換算)。しかし『密偵』が観客動員750万人、興行収入約5,480万ドル(約60億円。1ドル=110円換算。韓国映画振興委員会調べ)を達成し、2016年の韓国興行収入ラインキング4位となる好成績を納めたことが決め手となり、米国本社からもGOサインが出たようだ。主演は現在、『MASTER マスター』が公開中のカン・ドンウォン主演で、今夏より撮影している。
チェ氏「ワーナーはクリントン・イーストウッド監督しかり、一度成功した監督と引続きパートナーシップを結ぶという伝統があります。キム監督は盟友であり、『人狼 JIN-ROH』を手がけるのは、わたしにとっても昔からの宿題でしたから」とキム監督をサポートする理由を語った。
チェ氏のキム監督に対する信頼は厚い。2人はチョン・ウソン&イ・ビョンホン&ソン・ガンホが競演した西部劇『グッド・バッド・ウィアード』(2008)でも組んでおり、第61回カンヌ国際映画祭で招待上映されて大きな話題を呼んだ。そして、キム監督に託した『密偵』は、ワーナー・ブラザースが韓国で製作する初のローカルプロダクションという勝負作だった。
結果的に前述したビジネス面のみならず、2016 年の韓国映画界は『哭声/コクソン』『新感染 ファイナル・エクスプレス』など力作揃いだったが、その中でアカデミー賞外国語映画賞の韓国代表にも選ばれている。
チェ氏は「でも『密偵』の成功は、ある程度予想していた通りだったのです。『グッド・バッド・ウィアード』は10年前で700万人を動員しましたし、直前に公開され、わたしがプロデュースしたソン・ガンホ主演『弁護人』(2013)は1,100万人動員しましたから。キム監督のテイストは大衆向けというよりジャンル映画の要素が強いので、動員1,000万人は達成できませんでしたが、それでも一緒に仕事ができたことを誇りに思います。映画の製作は結果より、中身に満足感を得ることの方が多いのですよ」と胸の内を語った。
ワーナー・ブラザース・コリアのローカルプロダクションは、ワーナー・ブラザース・ジャパンの成功を受けて始動したばかり。『密偵』のほか、イ・ビョンホン主演『エターナル』(2018年2月公開)、イ・ジョンソク主演『V.I.P(原題)』(2017)など続々製作している。『人狼 JIN-ROH』の韓国公開は来夏予定。ハリウッドの製作システムが投入されたこれらの作品が韓国映画界でどんな旋風を巻き起こしていくのか、注目したい。(取材・文:中山治美)
11月16日14時49分追記:本文に一部事実誤認がございましたので修正致しました。
11月17日13時26分追記:見出し及び本文に一部事実誤認がございましたので修正致しました。関係者の方々にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。