伝説のテニス選手マッケンローのドキュメンタリー、監督を直撃!
伝説のテニス選手、ジョン・マッケンローを題材にしたドキュメンタリー映画『ジョン・マッケンロー:イン・ザ・レルム・オブ・パーフェクション(原題)/ John McEnroe: In the Realm of Perfection』について、ジュリアン・ファラウト監督がE-mailインタビューに応じた。
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本作は、過去のアーカイブ映像を基に、プレースタイル、審判への抗議や観客とのやりとり、そして勝利へのこだわりを通して、マッケンローの本来の姿をひもといていくドキュメンタリー作品。マチュー・アマルリックがナレーションを務めた。
1984年、マッケンローとイワン・レンドルが全仏オープンで対戦した伝説の試合を、フランスのINSEP(国立スポーツ体育研究所)で働いていたギル・デ・ケルマデックが16mmのフィルムで撮影した映像が使用されている本作。彼が撮影した映像は、この伝説の試合とアーカイブ映像を含め約20時間もあり、さらにそれらは100もの未編集のリール(一巻き)に分かれていたという。
「リールにはインデックスが付いていて、分類はされていたけれど、撮影した順序通りには並べられているわけではなかったんだ。つまり、これらをまとめていく作業過程の中で、僕は映画を仕上げていったというわけさ」とファラウト監督。通常のドキュメンタリー映画ならば、フィルムメイカーの伝えたい観点を手助けするために、(一部の)アーカイブ映像を使用するわけだが、ファラウト監督はこのフィルム映像の全てから、イメージを膨らませ、つなぎ合わせて映画を作らなければならなかったそうだ。
今作を鑑賞すると、マッケンローは審判に抗議したり、観客と話したりしながら、ゲームを支配しているようにも思える。「みんな彼のコートでの行動を把握していないし、彼をあまり理解していないと思うんだ。だから、今作では彼のそんな部分に焦点を当てたかったんだ。マッケンローはゲーム中、自分の怒りで(精神的に)自分が不安定になることは決して許さなかった。怒りやフラストレーションによって自分の勢いを止めることを決してしなかったし、それを利用して勝とうとしていたんだ」。
フランスを代表する俳優マチューがナレーションを務めたことについては、「彼を雇うアイデアは僕の念頭にはなかったが、今作のプロデューサーから提案され、そのアイデアを気に入って受け入れたんだ。彼自身、俳優あるいは監督としてもフランス映画のベストを提供してきた人物だからね。それに、今作はアーカイブの映像を使用したドキュメンタリー映画ではあるけれど、パーソナルな映画でもある。だから、典型的なスポーツドキュメンタリーと似たような作品を、(観客に)提供したくなかったんだ。マチューはパーソナルなクオリティーを予想以上に提供してくれたと思っているよ」と称賛した。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)