連続殺人犯テッド・バンディを描いたドキュメンタリー、監督が衝撃の内容を明かす
映画『メタリカ:真実の瞬間』や『クルード ~アマゾンの原油流出パニック~』のジョー・バーリンジャー監督が、Netflixの新作ドキュメンタリーシリーズ「殺人鬼との対談:テッド・バンディの場合」について、2月6日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
1978年に逮捕されるまでに30人以上もの女性を監禁して、性的暴行や殺害を繰り返してきた連続殺人犯テッド・バンディ。本作では、100時間にも及ぶテッドへのインタビューを通して、典型的な殺人犯とは異なり、社交的でハンサムなテッドが、いかにアメリカ中を震撼させた殺人を犯していったのかをひもといていく。
今年のサンダンス映画祭に出品されたテッド・バンディを描いた長編映画も手掛けているバーリンジャー監督。ドキュメンタリーシリーズを手がけたきっかけは、スティーヴン・ミショーとヒュー・エインズワースによる著書『Ted Bundy: Conversations With a Killer』だったという。「この本はテッドとのインタビュー・テープを基に執筆されているんだ。それは、スティーヴンが約100時間、6か月かけて取材したものだ。彼はそんな取材内容のテープを持って、2017年の1月に僕のもとを訪れてくれた。そして、『このテープはテレビシリーズにする価値はあるか?』と聞いてきたんだ。実際にテープを聞いてみたら、途中でやめることができなかったよ。それは殺人犯の心境が深く掘り下げられた内容だったんだ」その内容はそれまで得ていたどの知識より、より感情的に驚かされるものだったと明かした。
では、テッドはいかに女性を誘い、殺害を繰り返していたのだろうか。「最初の殺人はシアトルのワシントン大学の近くで、人を疑いそうもない一人で歩いている女性を探し、その女性に(けがをしているように見せかけて)助けを求めたんだ。そして彼女が見ていない隙に頭を殴り、その後もっとひどいこと(レイプ、殺害)をした。彼はそんな殺人を繰り返した後、日中でも殺人を犯すようになっていったんだ。シアトルから離れたレイク・サマミッシュという場所では、日曜日の日中に数人もの女性に声をかけ、2人の女性を誘拐した。彼は声をかける際に、自分の名前を語り、手に偽のギブスをつけ、車まで本を運んでほしいと頼む。その後、頭を殴るんだ。実際に警察で描かれた誘拐犯の似顔絵は、かなりテッドに似ていたそうで、それが新聞に載ったとき、テッドの友人は皆『彼に似ている』と言ったものの、彼を疑うことをしなかったらしいんだ」この事実にはバーリンジャー監督自身もショックを受けたそうだ。
このドキュメンタリーシリーズで伝えたかったことは、「彼が連続殺人犯の典型を全て覆していることだね。彼はチャーミングで、ハンサムで、しかも白人。(当時は)一般的に上昇志向のある白人の男ならば安全だと思われていたんだ。さらに僕らは、連続殺人犯を想像するとき、『羊たちの沈黙』のバッファロー・ビルみたいにダークでゆがんだ表情をしていて、簡単に判別できるのが連続殺人犯とみなしていた。そんな姿なら、そういう男を避けることもできるが、最も怖いことをする人物の大半は、(犠牲者に)近い人間だったり、殺人犯とは全く思えない人物だったりするんだよ」と答え、さらに、昨年 #Me Too movement があったことで、改めて、殺人と性犯罪を繰り返した彼の人生を見返すべき時期だと思ったとも語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)