誰だかわからない!化けっぷりがすごいオスカー候補たち
第91回アカデミー賞
日本時間25日に授賞式が開催される第91回アカデミー賞。昨年、英国首相ウィンストン・チャーチル役で悲願の主演男優賞に輝いたゲイリー・オールドマンをはじめ、これまで多くの実在の人物になり切った俳優たちがオスカーを手にしてきた。今年、候補になった俳優の中で、驚くほどの変貌ぶりをみせた4人の俳優をピックアップする。(コメントは全てオフィシャルインタビューより)
【写真】こんなにそっくり!『ボヘミアン・ラプソディ』キャストと本人を比較
まずは、主演男優賞候補のクリスチャン・ベイル。『バイス』(4月5日公開)で、ジョージ・W・ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニーにふんし、2度目の同賞候補に。『マシニスト』(2004)で約30キロ減量、『アメリカン・ハッスル』(2013)では20キロ増量など、執念の役作りで知られる彼だが、今回も20キロ増量。髪を剃り眉毛を脱色するなど入念なメイクも施し、20代から60代までを演じ分けた。肉体改造を行なったのは、2017年4月から約半年間。増量の手段としては栄養士によるマネジメントのもと、パイをたくさん食べたり、ご飯1杯に15個の卵を入れたり。外見のみならず、話し方や仕草も含め完全に別人。
その『バイス』で同じく話題になっているのが、ジョージ・W・ブッシュ役で助演男優賞にノミネートされたサム・ロックウェル。昨年、『スリー・ビルボード』で愛娘を殺されたヒロインと対峙する田舎町の巡査役で初の助演男優賞を得たばかりだが、2年連続候補入りも納得。サムはウィル・フェレルやジョシュ・ブローリンら、過去にブッシュを演じた人々のパフォーマンスを観察することからアプローチを始めたそう。「ブッシュの無邪気さの正体を見極めて、その魅力を引き立たせたいと思ったんだ。大事なのは戯画的に誇張するのではなくて、キャラクターを見出すこと」と秘訣を明かしている。
『グリーンブック』(3月1日公開)で主演男優賞候補になったヴィゴ・モーテンセンも、ベイルと同様、大幅な増量に挑戦。演じたのは、ガサツだが人に好かれる腕っぷしの強いイタリア系用心棒トニー・リップ。後に映画『ゴッドファーザー』や『グッドフェローズ』などで俳優としても活躍した人物だ。モーテンセンは、トニー本人の音声の入ったテープとビデオを研究し、14キロ増量。撮影に入る数か月前にスペインの自宅からニューヨークにわたり、トニーの息子で本作のプロデューサーでもあるニック・バレロンガら家族たちから当時の話をヒアリング。またイタリアなまりの英語を習得するのに参考になったのが、マフィアのボスを主人公にした海外ドラマ「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア」だったという。
そして、今年「大本命」と熱狂的な支持を受ける『ボヘミアン・ラプソディ』(公開中)のラミ・マレック。ロックバンド、クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリー役という重責を果たし、初のオスカーノミネート、主演男優賞候補に。もともとラミ自身はフレディと似ているとは言えないが、ステージ上でのパフォーマンスや仕草などを完璧にマスターし、有無を言わさぬ説得力がある。とりわけ、1985年に行われたチャリティー・コンサート「ライブ・エイド」の再現シーンは圧巻。ラミはフレディを理解するために「彼が書いた曲に目を通して、すべての曲に共通するテーマを探した」という。ムーブメント・コーチのポリー・ベネットの協力を得たのも効果的で、「ソファに座ってティーカップを手に取る時や、歯を隠す時のしぐさなどにフレディのシャイな側面が現れている」など緻密に分析。また、ラミの持論としてマーキュリーのステージ上での動きは「振付ではない」と断言。ラミが大いにインスパイアされたのが『博士と彼女のセオリー』のエディ・レッドメインだったそうで、「スティーヴン・ホーキングを演じる彼を観察しながら、『あの動きは振付されたものではない』と感じた」としている。
それぞれ独自のアプローチで役をつかんだ4人。いずれもオスカー候補入りは当然と思わせる迫力、名演を見せている。(編集部・石井百合子)